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第48話 9章 絶望の先の光
「そしてわたしは、財布も、携帯も持たず身一つで、神林を出てきました」
話し終えた香、否、星夜を彰吾は抱きよせ、そして強く抱きしめた。
「辛い話をさせたな……全て俺が受け留めた。お前は全て忘れていい。忌まわしい過去は神林に置いてきたんだ。星夜として新しい人生を歩んでいけばいい」
彰吾にとって、星夜の、香の過去は想像以上に酷いものだった。よく十年も耐えたと思う。そして、何よりあの時、出会えたことに感謝の思いを持つ。あのまま飛び降りていたら、星夜は死んでいた。哀れでならない。
あの時掴んだこの腕を、生涯離さない。そして、幸せにしてやりたい。心からの微笑みを与えてやりたい。
「お前が毎日微笑んでいられるように、おれが幸せにしてやる。星夜、俺のものになれ」
「でっ、でも……聞いたでしょ。わたしがどんなに汚れているか……」
「だから言っただろう、汚れているのはお前じゃない。お前をいいように蹂躙してきた奴らだ。だから、お前は耐えられず逃げてきたんだろう。お前はきれいだよ。一点の汚れもなく、清らかで美しい。俺はそんなお前を愛しているんだよ。俺のものになるのは嫌か」
星夜は、顔を横に振り、涙を溢れさせた。
彰吾は、星夜を抱きしめ、そしてその溢れる涙を吸い取ってやる。どうしようもなく愛おしい。この華奢な体ごと守ってやりたい。小鳥を守る親鳥のような思いでもある。
そして、愛し合う者同士のセックスを教えてやりたい。星夜は、それを知らない。ただ欲望の履け口として、蹂躙され嬲られてきた。男に抱かれた充足感など皆無だったろう。それを、自分が与えてやりたい。
彰吾は、星夜の頬を両の手で包み微笑む。そして、視線で星夜の気持ちを促した。
「しょ……彰吾さんの……者になりたい」
よく言えた、いい子だというように、彰吾は頷き、星夜に口付ける。優しく、しかし深く星夜の口腔内を我がものにしていく。
今まで経験してきた口付けと全く違った。支配を目的とした、一方的なもの、それが香だった時に経験したもの。
しかし、彰吾の口付けは違う。香はその心地良さに、頭の先から痺れたような陶酔を感じ、それが全身に広がる。
彰吾が、唇を離すと、去りがたい思いで、星夜は彰吾にしがみついた。離れたくない。そしてもっと欲しい……。
そんな星夜を、彰吾は愛おし気に見つめると、星夜の体を抱き上げた。ベッドへ運ぶためだ。星夜は驚いたが、彰吾がするに任せる。口付けの心地よさに、足の力が抜けて歩けない自覚はあるからだ。
「今日から、俺もベッドで寝られるな」
「ごめんなさい、わたしが占領していたから」
「それは、構わない。ただ二人でこのベッドは小さいな。明日早速大きいベッドを見てくるよ」
彰吾は星夜の着ているものを脱がしていく。肌を直接見るのは、あの夜以来だ。
「綺麗だ。あの日よりも綺麗になっている。色つやも増している」
星夜は恥ずかし気に頬を染める。その初心な反応がたまらなく愛おしい。優しく撫でてやる。そして、控えめに色付いた小さな粒を、そっと摘まんでやると、星夜の体がピックと反応する。そのまま、指で転がしてやる。
「ああんっ……」
星夜が、甘い喘ぎを漏らすのだが、恥じらいだろう、堪えているのが分かる。
「我慢しなくていい。ここは俺しかいない」
汗ばんだ髪の毛をかき分けながら言ってやると、安心したのかこくりと頷く。その様が可愛らしくて、今度は少し大きくなった粒を、ちゅーっと吸って、舌で転がしてやる。
「ああんっ……ああーっ」
星夜の喘ぎが、甘く色を帯びてくる。そして、中心のものが兆し始めている。
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