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"I still love you." 「それでも、きみを愛してる」8
カヴンの面々がそれぞれ帰路につき、そろそろじゃないかと話していたところで、早速つばめちゃんがぐずり始めた。
「あらあら」
「ぐっ……これはなかなかだな!」
「やっば、つっよ!」
グラント家の面々も耳を塞ぐ。やはり影響を受けないのは俺だけだった。
直は、事前に準備していたシールに描いた魔法陣を赤ん坊のおくるみに貼り付け、詠った。
詠い終わると同時に、みんなが耳から手を離した。ひばりさんは慌ててつばめちゃんをあやす。
「これで、強い波動はある程度吸収できるよ」
「泣くのは止めないのか?」
「止めないよ、泣くのも成長するために必要なことだって、聞いたことあるから。
ちなみに僕達にはいま、つばめちゃんの泣き声がほやあ、ほやあ、って感じで聞こえてる。新太には最初からこういう風に聞こえてたのかな? 多分これが本来のつばめちゃんの泣き声なんだろうね……ほんと、可愛いな」
「ああ」
俺は、なるほど、というのと、そういう風に聞こえてた、というのと、可愛いの同意、という意味合いを全部込めて激しく頷いた。
逆に、俺には他の人間に、つばめちゃんの泣いている声がどういう風に聞こえているのか認識できていない。周りのものが振動で揺れることとみんなの様子から、耳にかなり痛く響くのだろうかと、推測することしかできない。
「ちなみにこの魔法陣、一回きりしか使えないから、都度新しいものに貼り替えて、詠う必要があるよ」
「分かったわ。しかしさすが、結界魔法特化型カヴン出身ね! 一晩で作ったのでしょう? 普通ならもっと時間がかかるわよ」
「今朝方慌てて既存のを練り直してきたんだ、相性良いみたいでよかった」
「既存?」
「あー、うん、なんか、自分で魔法陣作れるようになった時に、昔、こういうのがあったら良かったのになーと思って、何個かバージョンを変えて作ってたんだよね……」
俺は、無言で直の肩を抱く。
「役に立って、嬉しいな……」
「そうよ、素晴らしいことじゃないの! さあ、私達にも扱えるようにレクチャーしてちょうだい」
しばし、グラント一家に対する直の講義が行われた。
場が落ち着くと、改めてひばりさん、匡、俺と直それぞれのゲストルームに案内され、次の日の朝まで散会、ということになった。
それから一週間程、俺達はグラント家で一緒に過ごさせてもらった。
といっても俺は出張が入っていたため、数日は泊まりがけで不在にした。直はリモートでできる仕事に限定してもらった。「戻った後のことを考えると恐ろしいけどね」とは言っていたが。
匡はというと、元々ワーカホリック気味で有給がたんまり残っていたらしい。「長期のバカンス気分だな。二週間は余裕」などと言っていたものの、
「えええー、マジか……」
いつの間にかグラント家の庭で、スーザンとダニエル相手に合気道を教えていた。
結局働いてるじゃえねかと即座にツッコミを入れたかったが、
「すごい! なにこれ楽しい!」
芝生の上に転ばされながらスーは大興奮、ダニーも頬を上気させながら笑顔で俺を見る。
俺はダニーに頷いた。まあ、楽しいならなによりだ。
6日目の夕食の後。
ひばりさんが、話があるということで、皆でリビングに集合する。
「つばめのことを考えたら、やはりグラント家にお世話になるのが一番安心だと考えました。
正式に、私とつばめ、ふたりでこちらにお世話になりたいです。よろしくお願いします」
元々ヒアリングにはさほど支障がなかったところ、一週間でスピーキングにも慣れてきたひばりさんが、自力で話す。
「もちろん、任せて!」
「大歓迎だよ」
「でも、そうするためには、一旦日本に戻って、自分の身の処遇を決めてくる必要があります」
「末田のことか?」
ひばりさんが頷く。
「私としては、たとえ離婚になったとしても、この子のそばにいたい。手放したくない。
彼のことは嫌いになったわけでもないし、たくさん、楽しい思い出だってあった。でも……それでもやっぱり、私はこの子を愛してるから。
話はしてみるけど、生まれてきた赤ちゃんをなかったことにって言うからには、きっともう、つばめを受け入れてはくれないだろうと思ってる。
ただ、私とつばめがこっちに過ごすこと、さらに話が進んで離婚する、という話になった場合、相手の家が厳格な教師一家で……かなり話が拗れるかもしれない。
あと、私の家族からも、すんなり許しが出るかどうか分からない。事情を理解してもらうのに時間がかかりそうだし、つばめが成長して落ち着くまでこちらにいるとなると多分、一、二年くらいじゃ全然足りないと思うし。
なので、あの、お手数をおかけして本当に申し訳ないのですが、私が日本に戻る間、つばめのことを預かってもらえませんか?」
「もちろんよ! うちに安心して預けられるって理解してもらうために、この一週間、一緒に過ごしてもらったんだから。むしろ信頼してもらえて嬉しいわ」
「他のが仕事や学校で留守にしてる間でも、わたしが面倒を見ていられるからねえ、安心おしよ」
おずおずと申し出たひばりさんに対して、パトリシアとダイアナが太鼓判を押す。
「じゃあ俺も一旦日本に帰ります。一緒に帰って、説得その他諸々、協力してきます」
「タスクは、間男に間違われてヒバリの足枷にならように、気をつけてよね」
「まっ……!?」
スーが、匡に対して手のひらをひらひらと振る。スーをよく知る大人は全員苦笑いだ。
ちなみにスーザン、今年で十五歳だっけか。ほんと、人が言い辛いことをズバズバ言ってのける奴だ。
「……充分気をつける。ご忠告どうも」
というわけで、次の日の午前中。
エディンバラ空港からスイス経由で日本に帰ることにしたひばりさんと匡をみんなで空港まで見送り、俺達は電車で帰路に着いた。
――――――――――――――――――――
帰宅した僕達は食事を早々に済ませ、新太に先にシャワーを浴びて、寝室に入ってもらった。
久々の、ふたりきりだ。
一週間のうち二回程は、魔力供給のために精を注いでもらったものの、さすがにグラント 家、なおかつみんなが近くにいる中なので、ほんの数分、ぱぱっと手早くしてもらっただけだった。
もちろん全然、全く物足りなかった。
朝の予祝の詠いすら、恥ずかしいというのもあったけれど、なんだかんだ忙しくてできていなかった。
僕だって、溜まっていたのだ。
だから、帰りの電車の中でも食事中でも、新太の熱い視線の意味が痛いほど分かって、考えていることは言葉にされなくても伝わってくるというか寧ろ視線に煽られた僕の下半身がもううずうずしすぎて身の置きどころがなくて、無駄に新太の腕を掴んだり、気づいたら繋いだ手をえっちな風に触りまくってしまったのは大目に見てほしい。
一緒にシャワー浴びたいと言われたけれど、一緒に入ってしまうとシャワーの最中で(もしくは脱衣の段階から)ヤり始めてしまうのは火を見るよりも明らかだったしそれだと疲れてしまうし寒くて風邪をひいてしまう可能性もあるので「お願いだから、先に入って。僕が入っている間は、良い子で待ってて、ね?」とおでこに何度もキスをして、なんとか我慢してもらった。
「新太」
諸々準備を終えて寝室に入ると、新太はベッドのヘッドボードにクッションを置いて背をもたれさせ、本を読んでいた。
僕は、ベッドへ近寄りながらパジャマのボタンを上から一つずつ外し、両肩を露わにする。
新太は持っていた本をヘッドボードに置き、両手を差し出した。
ベッドに上がって新太の両腕の中に入ると同時に、上半身にかかった布は取り払われる。
自分の胸の二箇所が、ピンク色から少し朱色になりつんと尖っているのが目に入って、少し顔が熱くなる。
「あらた……」
「ああ」
新太はそっと僕を抱き寄せ、首元にキスをしてきた。
そのまま顔が僕の小さく尖ったところに下がってきて、べろりと舐めつつ僕のお尻を大きな手で揉みしだく。
僕は堪らず、あん、と声を上げてしまった。
「久しぶりに長く繋がりたいから、念入りに解さないとな」
「うん。久しぶりだから、たくさん、たくさん注いで欲しいな。ここが……」
僕は待ちきれず、自分のパジャマのパンツを下着ごとずり下ろし、すでに半勃ちになったもの越しに、平らですべすべとした下腹部を撫でた。
「あのね、ここが寂しくって、堪らなかったんだ」
新太が僕の下腹部を凝視している。一旦、ふー、と大きく息を吐いて、
「……おねだり上手になったな、直」
あれ? あーって、叫ばない。エロかわいいーとか、言うのだろうなと思ったのに。
感情を抑えて格好つけたつもりなのだろうか。
ちょっとつまらなかったので、
「ふふふ、おっさんくさい」
と鼻を摘まんでみた。
すると新太は僕に鼻を摘まれたまま、顔を僕の喉元まで寄せ、上目遣いでこう言った。
「……ほう、そういう生意気を言うのはどの口だ?」
新太はニヤリと笑って僕をあっという間にひっくり返し、両足首を掴んで股を広げる。
大変無防備な状態になった僕は、どうにか体勢を立て直そうとするが、完全に遅れをとってしまった。
「え、えっ? ちょ、待っ、ちっ、違っ……!!」
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