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第3話「恋の行方は」
事が終わって落ち着いたら、とんでもないことをしたことに気づく。
翼の体で、涼真と寝ちゃった、とか。
人として無理な気がする。何してんだ、オレ。もう無理……。
涼真が部屋を出て行って、オレは、起き上がると、とりあえず服を着た。ちょうど着終えたところで、涼真が戻ってきて、ペットボトルの水を渡された。
ジーンズだけ履いて上は裸の涼真。
オレ……涼真に抱かれたのか。……翼の、体で……。
何だか、感極まって、目頭が熱くなる。
なんてこと、したんだろう。
人生で、最大の汚点になりそう……。
「翼、大丈夫か?」
「…………」
……もう。何がなんだか分からない。
涼真と翼がこんな関係なのにも驚いたのに。
なのに、オレ……涼真のことを、好きだと思い知って。一度だけでもいいとか。
何しちゃってんの、オレ。その事実だけでも、十分いっぱいいっぱいなのに。
最中、涼真が、何でか「翔」と呼んでて。
もう、何か、バレたのかと気が気でない。
翼の中に入って、涼真に抱かれたオレ。
……すごく気持ち悪いよな。
しかもオレ、ずっと涼真と、全然仲良くできてなかったのに。
オレ今、翼なのに。
翔と呼ばれたまま、めちゃくちゃ激しく抱かれてしまった。
…………どういうことなんだろう?
全然意味が分からない。
意味も分からないのに、抱かれるとか。
オレは、どうしようもないくらい、バカだ。
「何で翼、今日はオレの名前呼んだんだ?」
「……え?」
……どういう意味??
思わずぽかんとして、涼真を見上げたオレに、涼真は苦笑い。
「いつも好きな奴の名前呼ぶのに」
「……?」
好きな奴の名前を、呼ぶ?
え。……翼が好きな奴は、別にいるってこと……?
――何それ。
ああ、もう、意味、分かんない。もうだめだ。
オレは、ベッドから降りて、涼真の横を通り過ぎた。
「ごめん、今日は帰る……!」
「翼?」
オレは涼真の部屋を急いで出ると靴を履いて、玄関から飛び出した。隣、翼の待ってる自分の家につくと、玄関のドアを開けて駆け込む。
「翼!!!」
入ると同時に大声で名を呼んだ。シン、と静かな家の中。少しして、二階のドアが開いて翼が出てきた。
「うるさいよ、翔……涼真の家、出てきたのは分かったから、上で待ってたのに」
翼が、すごく嫌そうな顔でオレを見下ろしている。
「上がっといでよ」
そう言われて、オレは靴を脱いで、二階に上がった。
近くで顔を見たらとっさに何も言えず、ただ、翼を見つめる。
だってオレ。
翼の体で、涼真と……。
こんなこと、ありえない。
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