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第7話◇

「んー。……どーだった? 涼真とすんの」  軽い口調でいうのが、信じられない。 「……っつ……翼のバカ!!!!」  どうしていいのかわからず、バカな自分への自己嫌悪もあって、叫んでしまった。 「うるさいって、翔。……母さん、もうすぐ帰ってくるし、静かに話そうよ」  そんな風に言われたって、落ち着いてなんて話せない。 「……っ涼真と、つきあって、るの?」 「付き合ってないよ。言ってただろ、涼真。好きな奴の名前をいつも呼んでるって」 「――っ意味、分かんないんだけど……!」  もうすぐ、熱いものが、溢れ落ちそう。視界が滲む。  オレの顔を見て、翼は、ふー、と息をついた。 「オレ、翔が最後まで許すとは思わなかった」 「――――っ……」 「すげえ喘いでたじゃん、翔」 「……っお前の体……だからだろ」 「ああ。まあそうかもね。オレの体、男にされんの気持ち良くなってるからね。中身変わっても、体の感覚は引き継ぐんだなあ。新発見だな」 「……翼!!」 「大丈夫だよ。全部は聞いてないから。本格的に始まってからは、電話も切ったし」 「……っ」  そんなこと言いたいんじゃ、ない。  聞きたいのは……。  何が聞きたいのかも、分からない。 「――――良かったでしょ、涼真とすんの」 「……っ」 「翔、オレほんとのことだけ話すから。ちゃんと聞いてて」  珍しく真面目な顔をする翼に、オレは唇を噛みしめた。 「オレは、涼真じゃなくて別の男が好きなの。で、涼真も、オレじゃない別の男が好きでさ」 「――――」 「オレ達は――――慰め合ってた訳」 「………………っ……」 「翔には分からないかも、だけど……。オレは、叶わない恋が辛くて、SNSで知り合った奴とホテルに行こうとしてたの。二か月位前。そこを涼真に見つかって、咎められて……」 「――――」 「……オレは、涼真が好きな奴のことも知ってたから。お互い、慰め合う?って誘った。オレも知らない奴とやんのはやっぱ腰がひけてたし、涼真がいいならって」  そんなの。全部、全然何も、知らなかった。 「涼真は、ほんとは、辛かったろうけどね」 「――――つ……つばさだって……辛かったんじゃないの?」  全然、気付かなかった。ずっと一緒にいたのに。  ……双子の神秘なんて信じてなかったくせに、全部知ってるみたいな気でいて……。  全然……。   「――――……っ」  感極まって、大粒の涙がボタボタ溢れてきた。  すると、翼が苦笑した。 「こんな時に、よくオレの心配とか、するよね……ほんと、翔は……」 「――――っ」 「兄貴だよなー、ほんと……」  ……翼の体で、涼真に抱かれるとか、ほんと意味わかんないし。  全然兄貴なんかじゃない。……ほんと、バカだ、オレは。   「オレはほら……知らない奴とヤるよりは、マシだったから。でも涼真は……どんなに似てても、結局本命とは違うからね。辛かったと思うけど」  その言葉が指す意味。 「……涼真の……好きな、奴って……」 「もう、分かるだろ?」  ……さっき。  何度も……翔って、呼ばれた。  それが、いまつながった気がする。  でも、それをどう受け止めたらいいのか、分からない。  だったら何で。オレから離れたんだよ。  ――――だからオレは、女の子と、付き合ったり、して……。 「さっきさ、涼真にキスされたんでしょ?」 「…………」  何でキスのことなんて……と思いながら、頷くと。  翼は、はは、と笑った。 「オレと涼真はキスしてないんだよ。オレ達二人共、体はいーけど、キスはやめとこっていう、よく分かんない倫理感が合致してさ」 「――――」  もうなんか……良く分かんない。  オレ達は、さっき……すごく、キス、した。 「なあ、何で今日、キスしたの? 翔っぽいって思った?」 「――翼……?」  誰に話してんの? そう思った瞬間。翼の手に、スマホがある事に気付いた。  そして、それが、通話中な事も。翼がスピーカーにした瞬間。 「二人共、うちに来て」  涼真の声が、した。 「分かった。今行くから待ってて」  翼が、涼真にそう言って、スマホを切った。

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