3 / 5

第3話 俺の彼氏の浮気調査

あれからニか月後。 「ケイタ、早乙女が浮気してるかもしれないんだ。調べてくれる?」 「早すぎない? それ、相手の問題じゃなくて、マモルに何かあるんじゃないの?」 「俺がウブだから、物足りないんだよ、きっと」 「俺には刺激が強すぎるセリフだな。で、今度はどう調べるつもりなの?」 「え? 例の人形を持ってきちゃダメ?」 「そしたら、お前と浮気相手の2パターンを見る羽目になるかもしれないじゃん。そんなの見せつけられたら、俺は被害者同然だよ」 「うーん、じゃあちょっと違う策を考えるよ」 「もう、浮気相手ありでもよくない?」 「やだよ。俺以外とあんなに楽しく過ごしてるなんて許せない」 「うらやましいような、うらやましくないような。いや、うらやましくない」 「お前も恋人ができればわかるよ」 「上から言われるならまだしも、斜め上から言われるのはイラッとするな」 ♢♢♢ ある日、校内の廊下で、マモルと早乙女が一緒にいるところに遭遇した。 早乙女は背が高くて、軽音学部でベースを弾いているらしい。 チャラかっこよかった。 軽く挨拶を交わしたら、ドヤドヤと廊下を歩く集団が来た。 避けたときに、早乙女のズボンに偶然手が触れた。 ♢♢♢ 「話って何?」 「今日、たまたま早乙女のズボンに触っちゃったんだけど」 「まさか、お前も早乙女を狙って……」  「ないよ。恋は盲目って、よく言ったもんだな。パンツの話だよ。早乙女は、自分のでもなく、お前のでもないパンツを履いていた」 「そんなことわかるの?」 「ちょっとしか触ってないから、それくらいしかわかんないけど」 「あいつ、兄弟いないから……。浮気相手が置いてったパンツ穿いてるとか?」 「かなぁ……」 「ちょっと調べてみるよ」 ♢♢♢ それから一週間後。 マモルは箱から七つの袋を取り出した。 「あいつのアパートを、直近の一週間コロコロをかけて掃除した。そこについていた髪の毛から浮気を押さえられないかな」 「微妙に本格的だな。なんか早乙女が気の毒になってきた」 「目星はついてるんだ。浮気相手はバンドのギター担当の金髪だと思う。だから、まず金髪を視てくれよ」 そう言って、マモルは袋からコロコロの使用済みシートを取り出し、のり側の面を開いた。 ケンタは、ちりやら髪の毛やらの中から、金髪を見つけて触れた。 … …… ……… 「浮気……してると思う……」 「やっぱり……」 「浮気っていうか、お前の方が遊びみたいだよ」 「マジか! まあ、言われてみれば、たしかに遊ばれている感はあった……。ほら、俺にとってそっちの世界は全部初めてのことだから……」 「あぁ、うん、あんま聞きたくないな、その体験談。で、どうするの?別れるの?」 「そうだな……遊び相手なら、俺が離れれば追ってこないだろうし。別れようと思えば別れられる」 「そうなんだ。まあ、がんばってね……。俺は自分とは違う世界を見せつけられて、疲れたよ……」 ♢♢♢ 数日後 「今日、金髪の男と一緒にいたけど、あれが早乙女の彼氏?」 「まあ、早乙女の彼氏とも言うし、俺の浮気相手とも言う」 「どういうこと?」 「この間、金髪ギターのあいつともいい雰囲気になっちゃって」 「……マモルって、流されやすいんだな。もう、浮気じゃないよね。恋人のシェア?」 「人類愛かな」 「他人を巻き込まないで」 「まあ、トリあえず事件は解決だよ」 「解決してると言えば解決してるかな。平和的に。もう、俺、お前のパンツ触れないや。3パターン視る可能性があるんでしょ?」 「4パターンだよ。早乙女と俺、金髪と俺、早乙女と金髪、あと3人で、っていう可能性が残っている」 「可能性……残ってるんだ」 「お前が俺のパンツに触れるとき、それはパンドラの箱を開けることと同じ」 「希望に行き着く前に、お前の男性遍歴を全部見なきゃいけないの? ホント、意味ないやこの超能力。そもそも最後の希望ってなんなの?」 「人類愛」 「お前のパンツが、俺の超能力の価値を超えるときが来るのか……」 「お前に視られたからって、俺は怒ったりしないから。たまにはのぞきに来てよ」 「行かないよ。偶然でも視たくないよ。俺、のぞきの趣味はないからね」 ケイタはそっとマモルと距離をとった。

ともだちにシェアしよう!