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晴れゆけば5
「わざわざついてきてくれなくてもよかったんだよ?」
「俺がついていきたかったからいーの」
夏休み中盤。蝉の声が響く校内を僕と颯太は歩いていた。
申し訳なくて颯太を覗き込めば、腰を引き寄せられて頬を頭に擦り付けられた。僕は慌てて颯太を押し返す。
「もうっ……最近くっついてばっかり」
「だって嬉しいから〜」
僕と颯太が和解してからというもの、颯太はやたら僕にベタベタするようになった。
そりゃ僕だって悩みがなくなって嬉しいけれど。
今日は本来一人で来る予定だった。
赤本は和解してすぐに買ったから、学校で青本をコピーしようと思っていただけ。
たまたま颯太がその日会いたいと言ってきて、用事を告げたらついてきた。
今日の状況はこういうことだ。
「それにコピー時間かかるでしょ」
「んー……でも、四年分だよ」
「二人なら半分」
「……ありがとう」
資料室へ向かう廊下を歩いていく。
コピーが終わる頃はお昼時かもしれない。そのまま颯太とご飯。それから一緒に帰って勉強。
勝手にこの後の予定を想像して、嬉しくなってしまう。
「おっ、渡来に間宮じゃないか」
「あれ、松田先生」
途中でばったり松田先生と会う。
資料室は職員室のすぐ近くだからなんら不思議はない。
久々の松田先生だ。
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