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晴れゆけば6
「相変わらず仲良いな。資料室か?」
「そうなんです。亜樹が青本コピーするっていうので」
「偉い心がけだな」
僕と颯太が一緒に行動していることに松田先生は慣れっこみたいだ。微笑ましそうに見られるから少し恥ずかしい。
「あっ……松田先生」
「んー?」
「僕、志望校戻します」
ちょうど松田先生に会えたのだからと告げる。まっすぐな笑顔で言えたと思う。
松田先生は僕の言葉に目をしばたかせる。
僕はその不思議な様子を見つめる。
すると急に僕の元へつかつか歩み寄ってきた。
「わ」
頭に力強い掌の感触。わしゃわしゃと頭を撫でられた。
颯太より力が強くて、少し痛くて、でも優しい。
「了解」
最後にポンッと頭を叩かれて手が離れていった。
残るのは松田先生の笑顔。
目の当たりにしわが寄り、すごく嬉しそうな笑顔だった。
鼻のあたりがツンとする。
「じゃあコピー頑張れよ」
「はぁい」
「……ありがとうございます」
サンダルのパタパタという音が廊下を抜けていく。黒のジャージ姿がとても大きく見えた。
「よかったね、亜樹」
「……うん」
颯太はボサボサになった僕の頭を撫でる。僕と松田先生のやり取りは何も知らないけど、察してくれたような顔つきだった。
僕は颯太の手をすり抜け、その胸に体を預けた。
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