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フリージアのあわ1
おはよう、久しぶりなどといった声の上がる廊下。颯太と並んで歩いていると、じわり、汗がにじむ。
青本をコピーした日以来、学校には来ていなかったから、僕も久しぶりだ。
お祭りやらデートやら、なんやかんやする間に、夏休みは終わってしまった。思い返せばあっという間。
「まだあっついね」
「そうだね……。早く教室行くぞー」
「わぁっ」
颯太はにっこり笑って僕の手を引いた。戯れに走るから僕も笑ってついていく。
幸い誰ともすれ違わずに一組の教室までたどり着いた。
ガラガラ音を立ててドアを開ければ、涼しい空気が僕の周りを通り抜ける。
冷房がしっかり効いているところはさすが私立だ。幸せな気持ちで教室に入る。
肌が黒くなっていたり、逆に調子悪そうな色だったり、クラスメイトの変化は様々。もちろん変わっていない人もいる。
「あっ、清水くんだ」
ちょうど後ろのロッカーに清水くんが物を取りに来ていた。そこへ駆け寄る。
気配に気づいた清水くんが顔を上げる。
「おお。久しぶりだな、渡来」
「うん。久しぶりだね」
清水くんがするりと僕の手を握る。最近ではもはや恒例になってきた気がする。
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