958 / 961
番外編【姫と王子⑦】
そうやって続けていると、姫野の表情は幾分和らいだ。
「……あざ」
「ん?」
「あざ、できた」
姫野は小さな声で言った。
やけに重々しい声とは裏腹に、放たれた言葉はあっさりした内容だった。
あざとは痣のことだろうか。ぶつけたり、打ったりして、肌の色が変わるやつ。あの痛いあれ。
「……どこに?」
「……ここ」
姫野は手を伸ばして、自分の尻に触れた。姫野にとっては大事のようで、伝えようとする手が僅かに震えている。
「……見られたくなかった?」
「だって……汚いもん……」
姫野の綺麗な肌に浮かぶあざ。
痛いから嫌がるならまだしも、汚いから嫌がるとは、随分姫野らしい。俺は全く気にしないんだけどな。
「馬鹿だなぁ、姫野」
「ばかってひど……あっ、うわっ」
拳を振り上げた姫野を制して、一緒にベッドになだれ込む。
「やだっ、だめ、蓮くん!」
「だめじゃない。平気だよ」
「ボク的にはだめ!」
姫野の抵抗をあやしながら、俺は姫野の体をうつ伏せにする。既にズボンは緩めていたのであっさり脱がせることができた。
姫野の綺麗な尻にうっすら青紫色のあざがある。
「み、見ないで……変態……」
「全然汚くないよ、姫野」
「そ、それは少し消えてきてるから……」
「そうじゃなかったとしても。姫野は綺麗」
「れ、れんくっ、ひゃ」
あざに唇を寄せる。姫野はピクッと反応した。
「痛い?」
「い、痛くはないけど……あっんぅ」
姫野の返事に気を良くして、今度は舌を這わせる。あざに上書きするように強く吸う。
青紫色と赤色。うん、上出来。
だが少し痛そうな見た目ではあるので、ゆっくり舌を出して舐めてみる。労わるようにあざの縁をなぞる。
「やっ、だめ……」
「可愛い、姫野」
姫野の声が艶めく。久々の刺激に、なんだか止まれそうにない。
ともだちにシェアしよう!