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番外編【姫と王子⑥】
「ただいま!誰もいないお家!」
「変な挨拶すんなよ」
「えっへへ〜」
普段通りの姫野に苦笑いして、一緒に部屋に入る。暖房をつけて、上着を脱いで、姫野の肩に手をかける。
「ほい、座って」
「ん?」
そしてベッドの上に姫野を誘導する。姫野は大人しく腰掛けた。俺はその隣に座る。
「なんで最近おかしいの?」
「えっ、何か変かな?」
「さりげなく避けてるくね?」
「え〜〜」
姫野は心底不思議そうに首を傾げる。この表情を見ると何も隠し事はなさそうに見える。けれど姫野は演技が上手いことを思えば、これも嘘ではないと否定できない。
何より今まで過ごしてきた時間からの直感と違和感を、すぐに捨てられはしない。本当に姫野が何か悩んでいるとしたら、俺が守ってやりたい。
「どこがおかしい?」
「たとえばここんとこしてないこと」
「あれ? そう? 蓮くんのえっち!」
「おい。絶対お前もわかってんだろ」
「変な蓮くんだなぁ。さて、ボク、お風呂入ってくるね」
話は終わりとばかりに姫野は立ち上がる。仕方ない恋人だなと言いたげな表情だ。
逃げられると直感的に思った俺は、姫野の手首を掴む。
「へっ」
そのまま引くと、姫野の体は俺の足の上に落ちた。その腰に腕を回す。
「も〜、蓮くん、なあにー?」
「吐くまで離さないから」
「何もないのに〜」
けらけら笑う姫野の肩の上から顔を覗かせる。姫野の腰を腕でなぞると、その体は少し揺れた。
ああ、このまま押し倒したいと思ってしまう。聞き出すとかそんなこと放り出して。しばらく触れ合っていないのだから仕方ない。
「本当に?」
「ほんと……んっ」
たまらなくなって姫野の首元に口付ける。そのまま吸うと、淡い赤色がついた。服の隙間から手を差し入れ、上に伸ばす。
「やっ、だめ。れんく……んぅ」
既に立ち上がっている乳首をきゅっと摘む。姫野の口から甘い息が漏れる。そのまま指でこねまわす。反対側は指先でこする。
姫野は艶めかしく腰を揺らす。
「あっ、やぁ……だめ、だめなの」
「なんで?」
「ちがう……ひゃっ」
姫野の耳に声を吹き込む。そのあと耳たぶを甘噛みしたら姫野の体が小さく跳ねた。
可愛いな、こいつ。
もうなんでもいいかと下に手を伸ばした。姫野のズボンを寛げて、手を入れようとした。パシッと俺の手首が掴まれる。
「や、やめて……」
姫野は急に辛そうな、怖そうな表情を見せる。原因はここか。
俺は腕をどかして姫野の腰に戻した。そっと後ろから抱きしめる。
「なんでそんなに嫌がんの?」
「嫌がってない……」
「姫野。教えて。大丈夫」
ただ姫野に体を寄せて、声だけを空間に落とす。ゆっくりとしたリズムで姫野の体を撫でる。
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