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夜の出会い1
ぐる、ぐる、ぐる。
目を開けると視界が回っていた。夜中で薄暗い部屋の中、天井の電球が物凄い速さで回転している。横にあるカーテンの裾が上を向き、またすぐ下を向く。
ここ数ヶ月悩まされている回転性めまい。
瞳を動かすどころか指先ひとつ動かすこともできない。そうしたら余計に酷くなるとわかっている。
だが体ををうつ伏せにした。
「うっ……」
途端、急激に襲う吐き気。その波がおさまるのを待ってから、這って窓に向かう。
止まらない回転は自分が真っ直ぐ進めているか曖昧にする。懸命に手を伸ばし、体を少しずつ進ませた。
そうして進み続ければ、カーテンに手が当たる。窓の鍵を手探りで開け、思い切りスライドさせる。
ガンッという大きな音とともに、窓の外へ落ちるようにして出る。
「はぁっ……」
澄んだ夜の空気が鼻腔を通り抜けた。
そのまま深呼吸を続ける。古い空気を捨て、新しい空気を入れ。
徐々に楽になってくる。回転の速さが少し弱まってきた。
こうやって毎晩毎晩、同じことを繰り返している。もう嫌になる。
夜中に目が覚め、回転性めまいが起き、引くのを待って、眠る。
この一連の行動のせいで寝不足状態が続き、悪循環に繋がるばかりだ。
地面に這いつくばったまま、頭を腕に乗せる。疲れてしまった。
「こんばんは」
「……!?」
突然頭上に降ってくる声。バッと顔を上げる。急に動いたせいでまた視界が揺れた。
それでも視界には声の出所が映る。
満月を背に立つ、人の影が。
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