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第2話
気付けば部屋が明るくなっていてあのまま寝落ちたのか、、、なんてぼんやり考えながら身体を起こす
でも昨日のはるにぃの恋人出来た発言をすぐに思い出して憂鬱な気分になる
「何もしたくない、、、」
そんな事を思っても俺は中学3年の受験生、学校を休むわけにはいかない
もたもたと制服に着替えて準備をしていつもの時間に家を出る
すると隣の家の玄関が開き、はるにぃが出てきた
同じタイミングで家を出た俺に気付いて「おはよう!」なんて笑顔を向けてくる
いつもだったら朝から会えた嬉しさで俺も笑顔で応えていた、、、でも頭の中で繰り返し流れるあの台詞にどうしても上手く笑顔が作れない俺は、少し下を向きながら「おはよう、、」と返して走ってその場から逃げ出した
そのまま走って学校まで向かった俺はいつもより早めについてしまった
まだ友達も来ていない教室でぼんやりと外を眺めていれば頭を軽く撫でられる
「なんとなくそんな気がして早めに来てみたらほんとにいた。」
なんて声がして見上げればいつも時間ギリギリに登校するはずの友達 九條 楓 が立っていた
「珍しく早いな」なんて言えば「もしかして昨日の記憶ない??」なんてよく分からない事を言い始めた
"なんの事だ?" そう思っていたのが顔に出ていたのか呆れたように笑いながら「俺とのやり取り見返してみなよ」そう言った。携帯を取り出し楓とのやり取りを見返せば、昨日はるにぃと別れた時間あたりに "最悪だ。" そんなメッセージを送っていた
それに対して "どうした?" と返事がきていたが俺は返すことなく終わっていた
「あー、、、ごめん全然記憶にない、、」
「返事こなかったから不思議に思ってたけど無意識だったか、、、」
「ほんとごめん、、、」
よく見たら数分後には電話までくれていた
それに気付きもう一度謝れば「はるにぃとなんかあった?」と俺の前の席に座り優しく聞いてくれる
その言葉に思わず下を向いてしまえば「やっぱそーか、、、」と零す
楓は俺の家にもよく来る仲だからはるにぃとも何度か顔を合わせて話した事があった
だから俺のはるにぃに対する気持ちも話したばかりだった
「そんなに落ち込む程何があった?」
「はるにぃに、、、恋人が出来た」
自分で言ったその言葉にまた胸が痛んだ
「えっ、、、まじ?」
その問いかけに言葉を発せず黙って頷けば「まじかー、、、」なんて小さく呟く声が聞こえる
「はるにぃって高校でどんだけ告白されても誰とも付き合わなかったんだろ?尚也といる方が楽しいからって。」
「大学で同じ授業取ってる人がゆうにぃに一目惚れして猛アタックされたんだって、、、」
「、、、そっか、、」
「だんだん可愛いなって思うようになって、それで付き合う事にしたんだって、、、俺もごちゃごちゃ考えたりせず、、アピールしていけばよかったのかな、、、、」
そう言ってなんとか泣くのを堪えようとしてる俺の頭を撫でれば
「俺言っとくから、保健室でも行ってきたら?泣くの我慢しないでさ。確か今日は1限自習だっただろ。」
そう優しく声をかけてくれる
ちらっと時計を見れば先生が来るまで後数分という時間になっていた
この状態でいても勉強どころではないと思い楓の言う通り気持ちを落ち着かせる事にした
「そうする、、ありがと。」
「んっ。」
楓にお礼を言って立ち上がり教室を出て保健室へ向かう
「失礼します、、」
そう言って扉を開ければ先生が「どうしたの?」と声をかけてくれた
「少し体調が悪くて、、、しばらく横になったらマシになると思うんですけど、、、」
そう言えば「念の為熱だけ測ってね。」そう言われて体温計を渡してベッドに案内してくれた
ピピッと音がなり体温計を先生に渡せば「熱はないわね、、、何かあったら向こうで作業してるから声かけてね。」そう言いながらベッドから離れカーテンを閉めてくれた
横になればすぐに思い出される昨日の出来事
"一目惚れって、、、俺は小さい時からずっと、、、ずっと好きなのに、、、たまたま同じ大学だった人にとられるなんて、、、"
なんてここでうだうだ考えてもしょうがないって分かっているのに止まらなくて
想いを伝える事もせずにずるずると先延ばしにしていたのは自分なのに、先に想いを伝えた顔も知らないはるにぃの恋人に対して嫌な感情が止まらなくて、、、
そして、はるにぃが選んだ人に対してこんな感情を抱く自分が酷く醜い人間に思えて、、、
どんどん溢れ出る涙と一緒にはるにぃへの恋心もこの身体から流れてしまえばいいのに、そう思いながら静かに目を閉じた
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