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第40話
楓は俺を抱き抱えたまま器用に電話を掛けながら歩いていく
大学を出て数分ほど待っていれば1台のタクシーが目の前に止まる
扉が開き俺を乗せた後に自分も乗り込み行き先を告げる
車が走り出した後はまだしんどい俺を横にさせ「大丈夫だからな、すぐに病院着くから。」そう落ち着いた口調で伝えてきた
チラッと見えたその顔には汗がうっすらと滲んでいて、、、何かを必死に抑える顔にも見えた
大学近くの病院に着けば先程と同じように俺を抱き上げ病院内へと足を進めた
すぐに診てもらえることになり診察室へ案内された
ベッドに横になりながら先生の話を聞こうとしても頭に入ってこなくて、、、そんな俺に代わり分かる範囲で説明をする楓の声をだんだんと朦朧としてくる意識の中聞いていたけど、いつの間にかそれも出来なくなっていた
うっすらと目を開ければ見慣れない部屋に驚きながら身体を起こす
身体は少しだけすっきりしていた
腕を見れば点滴がされていた
"これのおかげなのか、、、"
そう思いながらボーッと眺めていれば扉が開き楓が立っているのが見えた
起きている俺を見ると慌てて近寄り「平気か?」と声を掛けてくれる
「大丈夫だよ。」と言えばホッとした顔で「誰か呼んでくる。」そう言って部屋を後にした
数分して先生がやってくれば、俺に起こったあの出来事はヒートで間違いないと告げられた
だけど、俺は一度ベータと診断された事を伝えれば
「まだ報告された件数は少ないですが、最近ベータと診断された方にアルファやオメガの特徴を訴える人が出てきたんです。最上さんもその1人だと思われます。なのでもう一度検査を受けてもらいたいのですが、、、」
「ベータから変わった可能性がある、、?」
「信じられないと思いますがその可能性が高いです」
「分かりました、受けます。」
そこで俺は高校入学前に行ったバース診断を再び受けることとなった
幸いな事にヒートと見られる症状が出たのはその日だけで次の日には普通に過ごす事が出来た
だから何かの間違いだろう、なんて思っていた
それから1週間後、検査を受けた病院へ
診察室へ案内され椅子に座る
そして向かい合うようにして座っている先生は、俺の目をまっすぐに見つめながらこう言った
「最上さん、検査の結果ですがオメガと判断されました。」
「えっ?でもあの日だけだったんですよ、症状があったのは、、、ヒートって1週間とか続くものなんじゃ、、、」
「それなんですが、、、オメガと言いましたが最上さんはまだ完全にオメガというわけではなく、オメガになり掛けている所です。だからあのような事になったんだと思われます。」
「オメガになりかけ、、、」
「今後、完全にオメガとなった時に定期的なヒートや子を宿す為の子宮がみられるかと。」
「そうなんですね、、、」
「ヒートとみられる症状が出た時の為に軽めのお薬から出しておきます。効きが弱いようでしたらすぐにまた来て下さい。」
「分かりました、ありがとうございます。」
言われた事で混乱しながらも何とかお礼を告げ診察室を後にする
心配だから、と迎えに来てくれた楓と待ち合わせて家へ帰った
家へ着いてもどこか夢のようでぼんやりとする俺にずっと黙っていた楓が口を開いた
「検査、、、どうだった?」
「オメガ、に、なりかけてるんだって、、」
「やっぱりそうなんだ、、、」
「やっぱりって?」
「俺、アルファだろ?だからあの時尚也から香ってきた匂いでもしかしてって、、、」
「そっか、、かえで、アルファだったな、、、あの時、俺から匂いしてたんだ、、、」
「あぁ。あと、バースの研究してたらそういう話題は入ってくるから、、、ベータから変わる人が出てきたって、、、」
「なるほど、、、」
「これからどうする?」
「どうするって?」
「尚也がベータだったから一緒に暮らすことも出来たけど、、、これからオメガになるならアルファの俺と暮らしててもいいのか?」
「あぁ、そっか、、、どうしよっか、、」
俺のその言葉に楓も今は何も言えないらしく静寂が2人をつつんだ
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