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第52話:陽斗side
尚也のいなくなった部屋で俺はただ静かに唇を噛み締めた
最初は弟みたいな存在
それだけだった
いつものように部屋で一人遊んでいれば響いたインターフォンの音
母親のパタパタと玄関へ向かう音が聞こえた後に聞こえる談笑する声
すると名前を呼ばれ、走っていけば知らない女の人と小さな男の子が1人立っていた
「はると、今日から隣のお家に住むことになった なおや君だって、挨拶して」
そう言われ、靴を履き男の子前まで行けば女の人の後ろに隠れてしまった
だけど気にする事無く「初めまして!」そう挨拶をし自分の名前を告げた
すると小さくだけど返してくれたなおや君
俺から差し出した手をビックリしながらも繋いでくれた手は俺より小さくて、一瞬だけ見せた笑顔がかわいかった
だから、時間があれば隣にお邪魔してなおや君に声をかけ続けた
最初は戸惑っていたなおや君も時間が経てば、あの時と同じような笑顔をよく見せてくれるようになった
「はるにぃ!」俺の事をそう呼んで後ろを着いてきてくれる姿が凄く嬉しくて、一人っ子だった俺にとって尚也は弟みたいな存在になっていった
そこから中学に上がり、3年になる頃には急激に身長も伸びた
そして高校に入る頃に診断されたαの性
周りには今までより人が集まってくるようになった
中には好意を寄せてくれる人だっていた
だけど、どれだけの人に好意を寄せられても尚也以上に一緒にいたいと思う人はいなかった
この時には自覚していた自分の気持ち
弟みたいだと思っていた尚也に対して性的に惹かれている自分がいる事に最初は戸惑いもしたが、一緒にいる時間が長くなればなるほどその戸惑いも消えていった
この気持ちを伝えようと思った事もあった
だけど
「はるにぃと同じ高校に行けるよう頑張る!」
そう言って無邪気に笑う尚也を見て
まだバース診断も終えていない中学生の尚也に言ってもいいのか、そんな気持ちも出てきて、、、
だから、、、中学を卒業したら、、
そしたらこの気持ちを伝えよう。そう決めた
大学でも俺に好意を寄せてくれる人はいた
でも、俺には尚也しか考えられなかった
尚也が中学を卒業するまであと1年、、、
あと1年の辛抱だ、、、
そんな時俺の目の前に碧が現れた
いきなりグループに加わったそいつはやたらと俺の後を追ってきた
「今日もカッコイイね!付き合いたい!」
何度断ってもそう言ってしつこくついてくるのをうっとおしく思っていた
"これが尚也だったら、、、"
何度もそう思った
いい加減しつこくて、"もっと強く言うか" そう思った時
「陽斗の幼馴染くんかわいーね♡」
そう言いながら携帯の画面を俺に見せた
そこには学校帰りの尚也の姿が写っていて、、、
「おまえ!これ、、なんで、、、」
「俺ね、陽斗と付き合いたいな♡」
「、、、、」
「俺の知り合いでさ、こんな子が好きなやついるんだよね~」
"断ったらどうなるか分かるよね?"
緩んだ口元、笑っていない目
声に出さずともそう言っているのが分かった
あの時の俺は、静かに頷いて碧を受け入れる以外の方法を思いつかなかった
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