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43.柊くんの友達
大学と同じ最寄り駅の学生向けのちょっとリッチなワンルームマンション。
そこの8階に柊くんは住んでいて。
そして3階の301号室。
僕は今、彼の部屋の5階下の一室に、佇んでいた。
「まあまあ、突っ立ってないで座んなよ」
ソファーを差して促してきたのは、ここの住人である、確か、……佐藤くん。
柊くんの大学の友達だ。
「あのっ、…でも、僕…っ」
「はーいはい、今お茶出すからね。人んち来て立ちっぱって、態度悪いよ~?」
そんな風に言われたら、座らないわけにもいかない。
佐藤くんは、僕がソファーの端に腰掛けたのを見て満足そうに笑う。
「紅茶にコーヒー、炭酸もあるけど」
どれがいい?と訊かれたから、何も要らないと答えると、
「ほらほら、そー言うトコ」
眉根を寄せるから、仕方無しに、じゃあ炭酸を、と答えた。
紅茶やコーヒーだとお湯を沸かすのに時間を取られそうだし、用が終わればすぐにでもお暇したい。
知らない人の家の中は、居心地が悪い。
「ほい。コーラで良かった?忍ちゃん」
「はい、ありがとうございます」
ローテーブルにコーラのグラスを2つ置くと、佐藤くんは再度キッチンスペースに戻っていった。
そして帰ってきたその手には、ケチャップもマスタードもかかっていないフランクフルトが1本。
「はい。これ忍ちゃんの」
「え…?」
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