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第12話
でも彼もきっとまたいつか、自分の指の間から砂のようにすり抜けていってしまうかもしれない。
(まあ、伏見くんにとってはきっと一時の火遊びみたいなものだろうけど。年上に憧れる時期だよね)
そもそも釣り合わない自分と彼との距離にばかり目を向けても仕方ない。傍によれば温かい。こんな寒い夕べに共にいてくれる相手がいることを幸せに思うべきだ。
「君ってさあ。実は甘えたなんだね。兄弟はいるの?」
「……いる」
「君は弟でしょ? 弟っぽい」
「まあ」
「まあって。なんだそれ、どっち?」
ころころと笑えば額を撫ぜていた手を握られ動きを封じられ、彼が射すくめるような眼差しで見上げてきた。
官能の炎を灯された透は、熱い吐息を漏らすと、握られた手を逆手にとって、彼の指先を唇に押し当てる。そのまま赤い舌をちらりと覗かせながら、透は人差し指の先を唇でしゃぶると、指の腹に歯を当て甘噛みをした。そして彼に視線を合わせながら嫣然と、指の付け根に向けて舌を這わせていく。
「んっ……、あぁ」
わざと声を上げちゅ、ぷちゅっ、とはしたなく音を立てつつ、唇を艶めかしく崩し、親指との間をちろちろと舐める。潤んだ眼差しで見つめると、眉根を寄せて耐えるような顔をした伏見に思わず「かわいいね」と婀娜っぽく囁く。押し付けた古着にベルトはつけなかったから、ボタンを寛げ、そのまま膨らんだ彼の欲望に手を伸ばした。
「もう、かたいね? 僕にこっちも可愛がらせて」
「透さんっ」
ぎしりっとベッドが軋み、挑みかかるように起き上がった伏見が今度は透を寝台の上に押し付けてきた。
男らしい美貌が苦し気にこらえる表情を浮かべるのがセクシーで、透の背筋をぞくぞくっと快感が駆け上がる。
「煽らないで。優しくするって約束、俺に破らせないで」
「いいよ、おいで。温めて」
立てた膝で彼の高ぶりをゆるゆると緩慢に刺激しながら指先で誘うようにするりと顎を撫ぜ上げたら、獣が飛び掛かるように彼に唇を激しく貪られた。若さと勢いにのまれまいとするが、透はすぐに熱い吐息を漏らし始める。
自分でシャツのボタンを外そうと動かした両手の首を片手で掴まれ、頭の上に戒められた。
「俺にさせて」
こうして組み敷かれるとやはり体格差はすごい。こんな風にされたら身じろぎ一つできそうにない。ぞくっと被虐的な快感が押し寄せ、無意識に赤い舌で唇を湿らせた。
ベルトとシャツのボタンを片手で器用に外されアンダーシャツをたくし上げられれば、もはやその欲を隠さない瞳の前に全て晒される。
余裕があるそぶりを見せても自分のペースを乱されるとやはり気恥しい。元彼と付き合っていた最後の方は一方的な奉仕ばかりをさせられた時期もあった。ただ相手を気持ちよくさせれば喜んでもらえるだろうと思っていたが伏見にとっては違う様だ。
どう愛し合うことか正解が分からなくなって、しかし年下相手にされるがままになるのも躊躇われた。
透は途方に暮れた子供のように眉をさげ、ズボンにまで手をかけられたから足をもじつかせる。縋るように伏見を見たら、今度は彼の方が艶っぽい低い声で囁いてきた。
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