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第14話

(久しぶり過ぎて上手くできるかな)  洗い場の床にローションを垂らしながら片手に取り、とろりと指先に絡めた。  恋人と別れて一年と少し。たまに一人でする時ですら虚しさが募るので、その間後ろを弄ってはいなかった。すっかり硬く狭まった蕾に薄く足を開いて立ったまま触れるがうまくいかない。   仕方なくシャワーの湯をかけ床を温めると、膝をついて洗い場に座り込んだ。  こくりっと喉を上下させてから、湯船の縁に手をかけ腰を浮かせた状態で、たっぷりとろみを纏わせた指先を蕾の皺を少しずつ伸ばすように含ませていく。 「はぁっ」  指先で恐る恐る探った粘膜だが、それでも身体はかつての恋人との官能の記憶を覚えていたようだ。頑なに思えた蕾が綻ぶのは早かった。  最初は恋人から丹念にされた行為も、最後の方は自分でならしてから彼を迎えることも多々あった。しかし何度やってもあまり得意な行為と思えなかったのは、自分も彼を思うだけでしとどに濡れる身体を得たかったと恨みがましく思うからだ。 「くっ、んんっ」  それでもこの身体を愛されたくて、一本の指で入り口をほぐす様にゆっくり抜き差しながら胸の先端にも手をやって気持ちを高ぶらせる。  指先ですりすりと柔く胸の頂を弄ると甘い兆しを捉え、すぐ指先に手ごたえを感じるまでになった。 最初は朔に吸いつかれてもどうとも思わなかった小さな粒は、何年もかけて僅かに赤みが濃くなった。触れられればすぐぷっくりと尖り色づくように躾られていた。  我が指の腹で弾くように擦るだけで息が上がってくる。 「はあ、はあっ」  酒で少し緩んだ理性が透の大胆さを後押しする。風呂の縁に縋るような体勢で大胆に尻を突きだしたまま、中指で肉襞の敏感なところを探しながら抜き差しを繰り返す。  自分ではどうしても手心を加えてしまって物足りない。透は少し乱暴なほど激しく求められることが好きな、あやうい淫蕩なところがあるのだ。  更なる快感を追い求め、ゆるゆると立ち上がってきた肉茎を緩く握った自身の掌の中で悩ましく擦り付ければ、快感に呑まれる質の透はあっと言う間にその行為に没頭した。 「あ……、あぁ。う、くぅっ」  浴室いっぱいにみだらな吐息とぬちゃ、ねちゃりという音が反響する。そんな音にも耳を犯され、透はぶるっと我が身を震わせた。  男盛りの身体に与えた久しぶりの自慰は、自分を待つ男の存在を意識することで余計に感度が上がる。頭の中で清潔感溢れる青年の逞しい体躯が自分を組み敷く幻想を思い浮かべて、わざと興奮を増長させる。 (僕の指じゃ、奥まで届かない、もどかしぃ。伏見君、伏見君) 「伏見、くんっ」  思うだけではなく無意識に彼の名前を呼びながら、透は目を瞑って自らを苛める手を早めた。  ぽってりと赤い唇からすすり泣きに似た甘い声を漏らしながら、指を二本、三本と増やして抜き差していく。 「んっあ……、あ、ああ。伏見君、来て、伏見君、んんっああ!」  いちばん敏感な部分を自ら攻め立て、ひっきりなしに嬌声を吐く中、透を追いかけ扉の前に立つ男の気配にすら気づけない。 「あんっ、あ、あっああ」

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