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リナリアを胸に抱いて17 

もちろん雷はさせまいとぎゅっと背中に手を回して抱きしめた。 (愛おしすぎる) 「違ってないです。あってます。可愛らしすぎて、いきなり癒されました」 「もー。僕、君より五つも年上なんだから、こういうの恥ずかしいよ」 「透さんが恥ずかしがるから、いいんです。そういう顔が見たい」  少し上にある透の頭を掴んで引き寄せ、楚々とした唇に口づける。彼が気に入ってくれたハーブの香りが漂う。柔らかな舌先をつつけば、それを合図に唇を開いてきた。  舌を吸ってやると、それだけで縋りつくような動きに変わる、透が愛おしい。 「んっ……」  首筋に触れ、もじついて兆した自分を隠そうとする。しかし互いの欲望が高まっているのを、雷は隠すつもりはない。わざと腰を浮かせてぐりっと擦り合わせると、透は艶めかしい吐息を漏らして雷の首に腕を回す。  目が合うと年上とは思えぬ無邪気な笑顔で首を傾けてくる。上品な形の唇に誘われて触れるだけのキスをしながら、フェロモンを意識して漂わせる。  フリージアに似た柔らかな香りがすると透は言う。ちゅっと口づけた透の首筋からも同じ香りがすると雷は思う。 「雷、らい……」  夢にまで見た甘い声で名を呼ばれ、雷は夢見心地のまま恋人を抱えて立ち上がった。 「透さん、愛してる。もっと俺の名前を呼んで……」  抱き上げているから、透の顔が普段よりずっと近くにある。 「僕も愛してる、雷、らい……」  透に頭をぐっと引き寄せられ、耳元で熱い吐息を零しながら囁かれるのがたまらない。 「透さん……。透」  この世で、彼からでないと得られない、強い多幸感が押し寄せる。彼を手に入れるため、時を越え、海をも越えて戻ってきた甲斐があった。  口づけを交わしながら書斎代わりの部屋から隣の寝室へ移動する。 「雷くん、力持ちだ」  照れを隠すようにはにかむ透が愛おしい。 「透さんが軽いんですよ」  彼を抱いて連れ去りたい。  幼い日に夢にまで見たことが、今は苦も無くできる。  向こうに渡ってから、雷は勉強だけでなくスポーツで心身を鍛えることも怠らなかった。身長はぐんぐん伸び、身体の厚みも増した。そのおかげで兄に引けを取らぬ強靭な体躯を手に入れた。  『フリージア』でアルバイトをしている時、透がたまに自分の姿をじっと見つめてくることに気が付いていた。顔は似ていないが、やはり兄と自分は骨格や雰囲気が似ている。複雑な気持ちにならないわけでもなかったが、それも『武器』だと割り切った。  彼を陥落させるための武器は多い方が良かった。現に今、昔の恋人を想い続け、あれほどガードの堅かった透が自分の腕の中にいる。それは雷が自分の持ちうる全てで彼を誘惑し続けてきたからに他ならない。そこがプライドばかり高い兄と自分の違いであり、強みでもあると雷は自覚していた。 「……透さん」  耳元で低く囁く、この声もその武器の一つ。彼の初めての男を彷彿とさせる声。それに反応し、透が小さく肩を震わせた。雷はそこに兄よりずっと強いと自負する、こみ上げる情熱の全てを滲ませる。 「貴方が欲しい。抱かせてください」

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