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第1話 プロローグ*
発情期がこんなタイミングでやってくるなんて思いもしなかった。
佐倉悠里(さくら ゆうり)は額に汗をにじませていた。
今はΩピルを呑んだので興奮状態は少し治まった。
悠里がヒート状態を体感するのは実に3年ぶりだった。
何年も経っていたからなのか、それは今までになく激しい発情だった。
フェロモンを垂れ流し、穴という穴から下品によだれを滴らせ、下等生物である自分を、これでもかと、どん底まで突き落としていく。
落ちていく感覚は脳を侵食し、とめどなく溢れる涙に自分の非力さを認識させた。
長い射精の後、αの男は体重をかけないように、配慮しているのか片腕を床につき、抱きかかえるように悠里の背中にぴたりとくっついていた。
この男の匂いは濃厚だ。少し嗅いだだけで意識がぶっ飛んでしまうほど頭の芯を麻痺させる。
皮膚が重なり合い、その体温に喜びを感じながらも、この場を早く立ち去らなければという焦燥感に駆られた。
「……のっ、退いて……もう……」
一刻も早く彼に離れて欲しかった。
αの精子を注がれた体は熱を持ちひくひくと痙攣している。
こんなに自分が敏感になり、後孔をかき回されて我を忘れるほど快楽に溺れるなんて。
我慢することができず、ひっきりなしに甘い声をだしαの男根を欲しがるなんて。
自分が絶頂の快感を味わったなんて絶対に悟られてなるものか。
悠里は尻の中にいまだに挿入されたままのモノを抜くために膝を進めた。
ずるりと引き抜かれるその感覚に、また声が漏れそうになる。必死に我慢して倒れこむように床に突っ伏した。
それだけの動作で息が上がってしまう。その様子をみて、αの男はクスリと笑ったようだった。
ゴロンと悠里を仰向けにし、持ってきていたタオルを手に取り、悠里の汗と涙で汚れた顔をぬぐった。
「きれいな顔だな」
αの男はそういうと右手で悠里の髪を撫でて、そのまま唇を額に落とした。
「あっ……やだ」
とっさに胸を押して男を押しのけようとするが、びくともしない。
筋肉質で悠里より恰幅の良いαの男は、たくましく太い左腕をゆっくり動かし、悠里の膝の裏を持ち上げると開脚させた。
「え……っ?ぁ……っ……まって」
「も、一回抱くから」
「は?ちょっと……あっ……」
さっき出したばかりだというのに、信じられないほど立ち上がったαのモノは、まるで凶器のように反りあがり、濡れそぼった悠里の後孔は欲しがるようにきゅうきゅうと切なく収縮した。
「休憩してるとこ、ごめんな……君の顔を見てると、また我慢できなくなってきた」
「え……は?無理……ダメ………あっ」
ぴとっと押し付けられる亀頭にビクンと体が跳ねる。思わず小さく声を漏らし、お尻に力を入れてしまう。
「ココは嫌って言ってないけど?」
悠里の身体は、言葉とは裏腹に、男のそれを欲しがっていた。気持ちには抗えず、欲しくてたまらなかった。
でもこれを受け入れてしまったら自分はどうなってしまうのだろう。引き返せない快楽に身を委ねてしまったら。
「あっ……ん」
けれど、もう自分の意志では止めることができない。興奮による震えが収まらなくなった。
じゅぶりという水音とともに悠里の蕾があαの男の肉槍を飲み込んでいった。
「……締まる……はぁ……はぁ君の中、最高だな」
いちど許した後孔は難なくそれをみ込んだ。
「んんっ……す、すごい……あぁ……」
これではまるで喜んでいるようじゃないか、と思いながらも声が出てしまう。
抑えられない、我慢できない、もうどうにでもなればいいと悠里は思った。
1度抱かれてしまったら2回も3回も同じだ。流されるまま流れてしまえばいい。
奥を突いてくる速度もさっきとは違い、味わうようにじっくりとゆっくりと、勿体ぶりながら動いている。
この人はαの中でも多分ハイクラスのαだ。他のαと匂いが違う、整った男らしい顔、シャツの上からでもわかる彫刻のような肉体。そして身体から放たれるこの、極上の香り。
部屋に撒き散らされたこの人の香りをすべて吸い込みたい。悠里は甘い声を漏らしながら、奇麗な白い腰と、丸みを帯びた尻を男に密着させていた。
ゆっくりと、悠里の形を確かめるようにαの指が高ぶりに絡みついてくる。
もう2度と会わないだろう、このαとの交わりを、忘れないように脳に体に刻み込もう。そう思いながら悠里は快楽に身を委ね、されるがままに腰を動かした。
優しくねっとりとした指の動きのせいで、悠里の淫液がさらに溢れ出してきた。
ただ…ただ、気持ちが良かった。
「あぁ。気持ちいい。最高だ」
αの男のモノがさらに大きく固くなる。
それはギリギリまで引き抜かれ、そして再び勢いよく突っ込むまれる。
「やぁ……い、いい……きもちいい」
悠里は今まで意地でもαに抱かれてなるものかと思っていた。
Ωの発情期なんかで自分の人生台無しにしたくなかった。αにコントロールされながら生きて行くなんてまっぴらごめんだった。
「ん、んん……もっと奥まで……っ、んぐ」
生々しい声が恥ずかしげもなく悠里の口から出てきてしまう。
「やばいな……どんだけエロいんだよ」
αの男も興奮して感じているようだ。
悠里は思っていた。いつか誰かと結ばれることがあったとしても、それは女性で自分は男として普通に生きていきたいと。
だが今はその時期ではないし、恋だの愛だの、ましてや誰かと性行為をするなど考えていなかった。
「いい眺めだ……たまらない」
「も、もっと……もっとして……っあ」
思いとは裏腹に悠里はこのαの密度にあっけなく陥落してしまった。
二人の息が重なり、何度目かの射精を終えた。
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オメガバース
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≪バース性≫
ご存じの方は読み飛ばしてください。
世の中には性別が男女だけでなく、α(アルファ)・β(ベータ)・Ω(オメガ)という第2の性がある。
αは支配層で人口の2割程度である。大企業経営者や大学教授、医師 、法曹、国会議員などの社会的地位の高い職業の者が多い。エリート階級で、ヒエラルキーの頂点。生まれながらにして優秀で、リーダー性やカリスマ性に優れている。Ωのフェロモンによりラット状態になりその場合性欲をコントロールすることが難しい。
βは中間層で一般人。人口の約7割だといわれる。人口のほとんどがβでありΩのフェロモンにαほどではないが反応する。
Ωは 一定の周期で「発情」し妊娠が可能だ。人口の1割以下の希少種といわれている。特殊な「フェロモン」を放つため発情(ヒート)すると体が不調になり、そのフェロモンはαとβ(特にα)の性的欲求を誘発し激しい劣情をもよおさせる。その性質の為、社会的にしいたげられ、隔離されたり、性犯罪に巻き込まれたりすることも少なくはない。
番(つがい)Ωはαに首の後ろを強く噛まれることにより、そのαと結ばれることができる。Ωは1度番になると他のαとの性行為ができなくなるがフェロモンを抑えることができる。婚姻関係のようなもの。Ωはそれにより保護され、αはΩを庇護下に置くことができる。
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