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第61話 全てが終わった
全てが終わった。
しかし、沢田さんの奪われた命は返ってこない。
人をひとり殺すことは、その人の家族や愛する人の人生を奪うこと。そんな無念を他人に与える権利は、絶対的に誰にも与えられていない。
田中井は自らが犯した罪により裁かれるだろう。
被害者やその関係者に取材陣がどっと押し寄せ、過熱した報道を行なわれないよう、飯田先生が対処してくれた。
今後は飯田法律事務所が被害者側の窓口になる事、取材は一切、当事務所を通して欲しいとの通知を出した。
悠里は長い戦いに幕を下ろしたのだ。
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悠里はシャワーを浴びてベッドの上に寝転んだ。
さっきまで熱く梶さんに抱かれていた。
番になってから梶さんは、悠里をより深く愛してくれている気がする。安心したらしい。
梶さんとの行為は、ガッツいてこないというか、濃厚な大人の愛し方になったというか、まぁその……とても気持ちがいい。
「梶さんはいつからTOBにむけて動いていたんですか?」
悠里は梶さんの大きな胸の上に顔を乗せてそう尋ねた。
「ん……随分前」
梶さんは左手で悠里の肌の感触を確かめながらそう答えた。
「インサイダーにならないように気をつけてたんですか?」
「いや、そういう訳でもないけど。おれはインハウスローヤーだからな。企業提携とか、M & Aとか専門だぞ。あそこの会社は健康食品とかの分野で利益が見込める」
悠里は梶さんの上に乗っかった。
「有難うございました」
「どういたしまして」
ちゅうっと音を立てて悠里は梶さんにキスをした。
「ん?もっかいする?」
悠里は急いで梶さんの上から降りた。
さっき終えたばっかりだ。もう今日は十分。
「……もう、満たされてます。大丈夫です」
はははと笑って梶さんは悠里の髪を撫でた。
ーーーーーーー完ーーーーーーー
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