27 / 91
第27話 生け贄の王子
3ー1 色
僕とテシガアラは、朝から街に出ていた。
本当は、リリアンも同行すると言っていたのだが授業があるため来ることができなかった。
うん。
仕方がない。
だって、ここは、世界屈指の学徒の街だ。
まずは、勉学に励まなくてはね。
レンガ造りの建物が並ぶ道具街で僕たちは、テシガアラのための日用品を調達していた。
部屋で使うための家具をいくつか購入しアルモディス寮まで運んでもらえるように僕が手配しているとテシガアラの姿が見えなくなった。
僕が慌てて付近を探すとテシガアラは、近くの雑貨屋の店先に並んでいる色とりどりの魔石を興味深げに見つめていた。
「魔石か」
僕は、テシガアラの横に並んで魔石を覗き込んだ。
魔石というのは、魔物の体内にある核のようなものだ。
いろいろな魔道具に組み込んで使用したり、呪を込めてお守りの代わりにしたりする。
たいていは冒険者たちが倒した魔物から取り出して冒険者ギルドに売り、そこから市場に出回る。
大きくて色が薄いものほど価値があり、高いものだと国家予算ほどの価格がつけられることもあった。
テシガアラは、赤い魔石をじっと見つめていた。
「炎の魔石だね。興味がある?」
「いや」
テシガアラが首を振った。
「ただ、その、レリアスの瞳の色に似ているなと、思って」
「僕の?」
僕は、色を持たない。
髪は、白髪だし、瞳は、血の色だ。
王族には、たまに僕のような色を持たない者が生まれることがある。
普通は、王族は、リリアンのような銀の髪に青い瞳を持つ。
だが、僕ともう一人は、違っていた。
ラクウェル兄は、金の髪に金色の瞳を持つ。
それは、王族にとっては特別な意味があった。
金の色を持つ王族は、魔物に好まれる魔力を持つ。
だから、金色を持つ王族は、生け贄にされることが多い。
ラクウェル兄もまた、そうだった。
生け贄として生まれ育てられた。
王妃の子であり、第1王子でありながらラクウェル兄は、神の子と呼ばれ王位継承権を持たなかった。
この国の王位継承権を持つ王子は、僕だけだった。
ラクウェル兄とは違い、色を持たない故に僕は、特別視されていた。
色を持たない王族は、魔力量が多い。
僕は、子供の頃からラクウェル兄とは違う扱いを受けていた。
ともだちにシェアしよう!