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第59話 初恋(7)
5ー7 もう一度
僕は、ラクウェル兄の招待を受けることにしてそれをラグナック学園長に伝えた。
罠なのは、わかっている。
でも、いつまでもこのままでいられるわけでもない。
ラクウェル兄たちと話し合う必要がある。
「でも、王城は、邪神の使徒によって占拠されているのではないかしら?」
リリアンが不安をにじませる。
「そんな場所にレリアスお兄様を行かせるわけにはいかないわ!」
「だが、このままでもいられないのは確かだ」
ハジメが考え込んだ。
「俺たちに賛同してくれる者ばかりでなくなってきているし、ここは、いっきに王城に攻め込むか?」
「僕は、反対だな」
僕は、思いきって話した。
「そんなことになれば内乱になってしまう。国が乱れるのは、よくないよ」
リリアンとハジメは、不服そうだったけど、僕は、できれば平和的に解決したかった。
ラクウェル兄に邪神が取りついているなら、それをなんとかできれば解決するのでは?
いや。
そんな言うほど簡単じゃないかもしれないけど、やっぱり兄弟で戦うのは嫌だ。
「僕は、ラクウェル兄ともう一度話し合いたい」
僕たちは、決して仲良し兄弟ではなかったけれど、それでも兄弟なんだ。
僕は。
5年前に一度、ラクウェル兄を見捨てたことがある。
その結果が今、だ。
「もう、過ちを犯したくはないんだ」
もしかしたら聖女であるリリアンと魔王であるハジメならできるだけ被害を出すことなく事態を納めることも可能なのかもしれない。
けど。
僕は、もう、ラクウェル兄を見捨てたくはなかった。
「僕は、もしかしたらまだ、ラクウェル兄を救うことはできるんじゃないかと思ってるんだ」
僕がそう言うとハジメが怒りを僕に向けてきた。
「あんた、あいつを許すって言うのか?あんなことされてきたのに?」
ハジメは、僕を冷たい目で見つめた。
「あんた、バカなのか?」
「私もいくらレリアスお兄様の考えでもこれだけは同意しかねますわ!」
「でも、憎しみは何も生まない」
僕は、ラクウェル兄が贈ってくれたあの枯れた花を思い出していた。
僕たちだって、最初から憎しみあっていたわけじゃないんだ。
もう一度。
やり直すことだって、できるのではないだろうか。
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