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第60話 初恋(8)

 5ー8 傷つけたくない。  王城でのパーティーの日。  僕は、リリアンとハジメと共にラクウェル兄のいる王城へと向かった。  でも。  行きの馬車の中は、雰囲気が最悪だった。  リリアンは、ともかくハジメは、僕がラクウェル兄との和解を提案して以来、口もきいてくれない。  婚約者同士だというのに、僕たちは、視線も交わすことがなかった。  走っていく馬車の窓から久しぶりの王都の街並みを見ながら僕は、涙で瞳が潤むのを感じていた。  あんなに僕のこと愛してくれたのに。  僕は、ちらりとハジメを見た。  けれどハジメは、僕のことを見もしない。  「あんたたち、いい加減にしてくれない?」  リリアンが口を開いた。  「ウザいのよ!」  う、うざい?  僕は、リリアンに言われてぐさりと傷ついていた。  リリアンの鋭利な言葉が僕の胸に突き刺さる。  意味はよくはわからないけど、とにかく今は、リリアンは、僕のことを嫌っている?  「どうせ、お互いのこと好きなんでしょ?なら、いつまでも意地を張り合うのはやめて!」  リリアンは、僕とハジメにびしっと言い放つ。  「これから敵の陣地に乗り込もうってのに、仲違いしたままとか。いい加減にして欲しいわ!」  「ごめん・・リリアン」  「すまない」  僕たちは、リリアンに頭を下げたが、リリアンの怒りは和らぐことはない。  「謝る相手が違うのよ!」  リリアンがきぃっと僕たちを睨み付ける。  「このままラクウェル兄の元に乗り込む気なの?もしかしたらみんな、無事ではいられないかも、なのに!」  確かに、そうだ。  邪神との戦いになれば、何があるかもわからない。  いくらハジメが強くってももしものことはある。  このまま、ハジメとお別れすることになったりすれば、僕は、もう。  僕は、ちらりとハジメの方を見た。  ハジメも僕の方をうかがっている。  「あ、あの」  「悪かったよ」  ハジメがそっけなく言った。  「ただ、レリアスが俺よりあいつのことを選ぶつもりなのかと思って」  「そんなこと!」  僕は、ハジメに向かって声をあげた。  「僕は、戦いになったら君たちが・・傷つくんじゃないかって不安で!」  「そりゃ、傷つくかもだけど」   ハジメが僕を見た。  「もっと、俺のこと信じてくれてもいいんじゃね?」  「信じてる。信じているけど、でも」  僕は、ハジメに話した。涙がしらないうちに溢れて頬を塗らす。  「僕は、君にも・・君たちに傷ついて欲しくないんだ!」  

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