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第61話 初恋(9)
5ー9 王城
「レリアス」
ハジメが僕をじっと見つめた。
「もっと、俺のこと信じてくれ。俺は、レリアスを守りたい。それに、レリアスの愛するこの国を、世界を守りたい。そのためならなんだってするさ」
「ハジメ」
僕は、涙を拭って頷いた。
「信じているよ。でも、君が傷つくと思ったらどうしても・・心配で」
「レリアス」
ハジメが僕の手をとり自分の方へと引き寄せ僕を自分の膝の上に座らせる。
「俺を信じて」
ハジメが僕の手に唇をよせる。
「俺は、魔王で、異世界人で、君の恋人で、婚約者で、年下で・・頼りないかもしれないけどあんたを愛する気持ちだけは誰にも負けない」
ハジメが僕を上目使いで見つめた。
「愛している。信じて欲しい。必ず、邪神を倒してお前を守ってみせる」
「ハジメ・・」
見つめ合う僕らにリリアンが咳払いをした。
「王城に着いたわよ」
僕たちは、馬車の窓から見える王城の門に空気が張りつめるのを感じていた。
これから、何が起こるのか。
王城の門は、僕たちが入ると鈍い音をたてて閉まっていく。
僕は、うつむいていた。手足が冷えていくのがわかった。
「大丈夫、よ。レリアスお兄様」
リリアンが勝ち気そうな笑みを浮かべた。
「私たちがついてるわ。決して、あなたをラクウェルには渡さない」
「ああ」
ハジメが僕の首元にキスをした。
「もう二度と、あいつらには触れさせん」
僕は、二人の言葉に勇気を与えられていた。
「僕も戦うよ」
僕は、二人に告げた。
「僕だって、一応魔道師なんだから、戦える」
3年前、ラクウェル兄に敗れて以来、力を封じられている僕だが、少しぐらいの力なら使える。
ほんの小さな力かもしれないけど僕もリリアンとハジメを守りたいんだ!
「わかった」
ハジメが僕の頬にキスした。
「レリアスは、俺を守ってくれ。俺は、レリアスのことを守る。二人で戦おう」
「って、私は?」
リリアンが呆れた様子でため息をつく。
「ほんとに信じられないわ!」
僕たちは、笑った。
馬車が停まり、扉が開く。
ハジメが僕を抱いて立ち上がる。
「行くぞ!」
僕たちは、頷いた。
戦いが始まる!
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