62 / 91
第62話 初恋(10)
5ー10 真実
僕たちは、宰相であるリトアール公爵に出迎えられた。
「よくおいで下しました、レリアス様」
茶髪で緑の目をした痩せぎすな青年であるロリス・ティル・リトアール公爵は、ラクウェル兄の魔法学園での同級生だった人だ。
3年前、ラクウェル兄が反乱を起こしたとき、当時の重臣の中でこの人だけは、ラクウェル兄によって生かされた。
以降、ラクウェル兄の腹心として国家の運営に携わってきた人だ。
でも。
今の王城においてこの人が本当にリトアール公爵自身であるとは考えにくかった。
僕らは、リトアール公爵の後について王城へと入っていった。
リトアール公爵は、玉座の間へと僕らを案内する道中、僕に話しかけてきた。
「レリアス様、このようなお願いができる立場でないことは、重々理解しておりますが、ご無礼をお許しください」
リトアール公爵は、歩きながらそっと僕に話した。
「どうか、ラクウェル様をお救いください」
はい?
僕は、リリアンとハジメをうかがった。
二人は、怪しむようにリトアール公爵を見ていた。
「兄上を救って欲しいって、どういうことでしょうか?」
僕が訊ねるとリトアール公爵が一瞬、言葉につまった。
彼は、しばらく黙っていたが、やがて、僕に告げた。
「言葉の通りでございます、レリアス様」
ラクウェル兄を救って欲しい?
僕は、それは、邪神から救って欲しいということだと思った。
「それは、難しいことでは」
僕は、リトアール公爵に答えた。
リトアール公爵が頭を振った。
「あなたは、何もご存じないのです、レリアス様」
リトアール公爵は、立ち止まると僕の方へと向き直った。
「ラクウェル様の真実を」
ラクウェル兄の真実?
僕は、意味がわからなくってまじまじとリトアール公爵の顔を見つめていた。
リトアール公爵は、僕たちを見回すとため息をついた。
「今夜、全ての秘密が明らかにされるでしょう。そうすれば、あなたもラクウェル様のお気持ちが理解できることでしょう」
僕は、リトアール公爵に問いただしたかったけど、彼は、僕の疑問に答えることはなかった。
ともだちにシェアしよう!