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第66話 再生と改革

 6ー1 帰還  3年ぶりに僕が王城に戻ったのは、その年の暮れのことだった。  シュテルツ王国の冬は、寒さが厳しい。  しんと雪が降りしきる中、僕は、王城へと帰還した。  3年前に王城を追われたときは、ラクウェル兄の手で淫紋を刻まれ、自らの手で魔力を封じさせられて性奴として娼館へと売られた。  僕は、王城へ向かう馬車の中で窓から雪を見ていた。  寒さに体が震える。  ハジメが僕の体にそっと毛布をかけてくれた。  「風邪ひくぞ、レリアス」  「ありがとう、ハジメ」  ハジメが王城へと共に入ることは僕の帰城の条件の1つだった。  僕は、ラクウェル兄からリリアンを守るために聖女召喚を行ったが、結果、魔王である異世界人 テシガアラ・ハジメが召喚されてしまった。  そのときは、聖女召喚に失敗したことに絶望してしまった僕だったが、それからいろいろあって今では、ハジメは、僕の婚約者になっていた。  僕は、建国祭にラクウェル兄が開いたパーティーで国に害をなす者を皆殺しにしたことに罪悪感を持っていた。  そのためもあって、今まで再三王城へと戻るようにという宰相リトアール公爵の要請を断り続けていた。  だが。  聖女である妹のリリアンが僕の代わりに王城で執務に励んでいたのが、この度、酷い風邪で倒れたため、王城にいったん、戻ることにしたのだった。  リリアンは、まだ17才。  魔法学園の生徒である彼女が王代理を勤めるのは、かなりの無理があった。  リトアール公爵は、僕にちくちくと話した。  「リリアン様が倒れたのは、疲労が主な原因です」  リトアール公爵の言葉に僕は、仕方なく王城へ戻ることを決めたのだ。  リリアンが魔法学園を卒業するまで僕がリリアンの代わりに王代理を勤めるという約束で僕は、王城へと戻ることにした。  ハジメは、魔法学園での勉強が面白いらしくて一時的に避難のために入学していた魔法学園で本格的に魔法を学ぶことにしているのだが、僕が王城に戻るにあたって僕の守護騎士として同行してくれている。  王族は、すべて守護騎士を持つ。  だけど、僕とリリアンは、守護騎士を持たなかった。  僕は、3年前に魔力を封じられる前までは、この国でも有数の魔道師だった。  そのため、騎士を持つ必要がなかったのだが、ハジメとの婚約を期にハジメを守護騎士に任命した。  魔王であるハジメをこの国の国民として迎えるためにとしたことだった。  

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