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第76話 再生と改革(11)
6ー11 忘れられない夜
裏通りをふらふらと歩いていると娼館らしきものが立ち並ぶ通りに出た。
僕は、疲れていて。
とにかくどこかで休みたかった。
僕は、異国の彫刻の刻まれた柱に囲まれた玄関の娼館の扉を開いた。
「いらっしゃいませ」
一斉に女たちが僕を出迎えてくれた。
僕は、休みたいことを伝えると、その娼館の女主人らしき豪奢な黒髪の美女は、奇妙な顔をしていたが、すぐに僕を奥へと通した。
そこは、広くて静かな部屋だった。
ハジメがとった宿屋も豪華だったが、この部屋ほどではなかった。
部屋の中央に置かれたベッドに倒れるように横になると僕は、すぐに眠りに落ちた。
「ん・・」
夜間に僕は、人の気配に目を覚ました。
誰かが僕に触れている?
優しい温かい手に触れられて僕は、思わず声を漏らしていた。
「ぁんっ・・ハジメ?」
僕は、その誰かに身体を擦り寄せた。
ハジメに抱かれるのは、久しぶりで。
僕は、嬉しくって。
ハジメのゆっくりとした愛撫に身体を震わせていた。
「ハジメ・・」
ハジメが僕にキスをしようとしたとき、僕は、不意に思い出した。
ここは、娼館、だ。
ハジメがいるわけがない!
僕は、僕を抱いている誰かを突き飛ばした。
「だ、誰?」
「ひどいな、突き飛ばすなんて」
その男は、僕を見つめて口許を緩めた。
長い黒髪に深い蒼の瞳。
たくましい体躯は、申し訳程度に衣類で隠されている。
美しい男、だった。
どこか、ハジメに似ている。
「私なら、君のような美しい人を一人で泣きながら眠らせたりなんてしない」
その男は、僕に微笑んだ。
「おいで、美しい人。私が全てを忘れさせてあげよう」
僕は。
その言葉に操られるように恐る恐る手を伸ばした。
「いい子だ」
僕を抱き寄せるとその男は、耳元でささやいた。
「今宵は、浮世のことを忘れさせてあげるよ」
男にキスされて。
僕は、思い出していた。
レディ カルプニアと逢い引きしていたハジメ。
僕は、腹が立っていた。
浮気するなんて!
「どうしたんだ?」
「何も」
僕は、その男をベッドへと押し倒しにっこりと笑った。
今夜は、忘れられない夜になりそうだ。
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