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第1話

「愚かな種族よ。この森は我らの領地だ。何度言えば理解できるのだ」  いつも通りの高飛車(たかびしゃ)な声が森の木々に響き渡る。 「よぉ。五日ぶりだな。俺達バカだから何回言われてもわかんねぇんだよ」  巨木の上から見下ろし、からかうように笑いながら言った。  高所から見ると彼の小さい身体は豆粒のようだ。 「お前達オークは討伐対象だ。悪さが過ぎるなら軍出さねばならない。早くこの地を去れ!」  家臣一人のみを従えて勇敢に発言しているのはエルフの若者だ。  エルフだから実は三百歳とか超えているのかもしれないが、オークであるライモには自分より年下の少年に見える。 「ユリ様、醜いイノシシ共に言葉など理解出来ません。相手にせず行きましょう」  ユリの家臣がユリの長い耳に囁く。  小声だがライモの耳には届いた。  ライモは木から飛び降り、ドォォンと地面を震わせ二人の目の前に着地した。 「なっ!」 「ユリ様っ!」  二人の前に筋骨隆々の巨体を晒す。  その風貌は短く刈られた銀髪に銀の瞳。  そして巨大で吊り上がったイノシシのような鼻に、下顎からは牙が突き出ている。 この容姿だけでエルフには十分威嚇になるはずだ。  エルフのユリはライモの肩位までしか身長が無く、横幅は三分の一程度で華奢だ。  だが怯みつつも鋭い目をライモに向けてきた。 (そうそう、この目だ……)  ライモは内心喜んでいた。

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