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第2話

 約半年前にこの森でユリを初めて見たあの時、何かドンッと雷が落ちたような衝撃を感じた。  あれが何だったのか今でもよく分からない。  しかしあれ以来、ユリの姿が見たくて度々ここへ来てしまう。  本当は他の森でも狩りには困らないのだが。  ユリはいつも上着の詰め襟を首の上までぴっちりと締め、長い金髪は乱れることなく一つに束ねている。  薄紅色の唇を堅く結び、緑の美しい瞳は力強い。 「そうだよ。お前らの要求なんて、理解できねぇよ」  ライモは二人を見下ろすように言った。  ユリの家臣が震えながら弓を構えている。  半年間でユリ達に何度も遭遇しているが、こんな至近距離まで近づいたのは初めてだった。 「ライモー! そんなちっこいの早くヤッちまってくださいよー」 「そうそう、いい加減うんざりッスよ〜」  ライモの子分達がギャハハと騒ぐ。  ユリは家臣を抑えつつ、ライモを睨みつけていた。  その時、ふわっと甘い香りが漂ってきた。  本当に気のせいかと思うくらい微かにだが。  ふとユリがその美しい顔を歪ませて言った。 「……お前、クサイ」   ライモはユリを睨み唸った。 「あぁ?」  ユリは鼻と口を手で覆いつつ、さらに続けた。 「け、獣臭くて敵わん。……今日は引く」  ユリは涙目で顔を赤く染め、長い耳は下を向いている。  そしてユリはライモに背を向けると家臣に「行くぞ」と言い、その場から立ち去った。 「なっ……!」  唖然として固まる。 「ギャハハハ!」 「ライモが匂いだけでエルフを追い払った!」 「流石、兄貴だぜ!」  子分達は口々に笑った。 「うるせぇ! お前ら殴られてぇのか!」  ライモは子分達に怒鳴り、やり場の無い怒りをぶつけた。

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