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第3話

(そんなに、匂うか?)  ライモは自身の腕に鼻を寄せクンクンと嗅ぐが、自分自身の匂いはあまり分からない。  正直、傷ついた。  ユリの家臣はいつも『醜い』とか『イノシシ野郎』だとか容姿に関しての侮蔑の言葉を吐くが、これまでユリがそれらを言った事はない。  そのユリに面と向かって「クサイ」と言われた。  しかも苦しそうな表情で、本心だとわかるから余計に傷ついた。  侮辱する為にわざと言う暴言の方がまだ優しい。  ライモは仲間たちから離れて泉にやってきた。  水浴びをしようと思ったからだ。  森の奥にある小さな泉は、底が深く、清らかな水がこんこんと湧き出ている。  周りは鬱蒼とした木々に囲まれ静かだ。  泉に近づくと、ライモは何かの気配に気づいた。  それは泉の水面からから小さく顔を覗かせていたが、ライモに気付くとスッと水に潜り込んだ。  一瞬見えた金の髪。  まさかと思いつつ、ライモは泉に近づき、水面を覗き込んだ。  泉の奥に誰か(ひそ)んでいる。  ライモはその影を上から覗き込み見続けた。  しばしの静寂。  森の風が木の葉を揺する音と、鳥の(さえず)りだけが聴こえる。  しばらくすると、水面が波立ち、ザバッとそれは顔を出した。 「ぷはっ!」  はぁはぁと空気を貪るユリをライモは覗き込みニヤニヤしながらきいた。 「よお。服着たまま水浴びか?」

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