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第4話
ユリは何も答えず泉の縁にもたれかかり荒い息をし続けている。どうやら泉に隠れていたようだが、息が続かず諦めて出てきたようだ。
「お前、いつも一緒の奴はどうしたんだよ」
ユリが一人でいることに違和感を感じて聞く。
わざわざ水中に隠れていた理由も気になる。
「……うるさい。ほっといてくれ」
ユリはライモの目を見ずに言った。
ユリは濡れた髪を鬱陶 しげにかき上げた。
水滴が滑らかな頬を伝い流れていく。
ライモはユリの色気にゾクリとした。
ユリの呼吸は依然として荒く、頬や長い耳が赤く上気している。
水中で息を止めていたから苦しそうなのだと思ったが、それだけでは無い様子だ。
「お前……どっか悪いのか?」
少し心配になり、そう聞いてユリに近付いた瞬間。
風向きが変わり、突如、物凄く甘い香りがライモの鼻を突いた。
つい先程ユリから微かに感じたあの匂いと同じだと分かったが、先程とは香りの量が桁違いだった。
そのことでライモはあることに気付いた。
「お前っ! Ω か⁉」
ライモは驚いて後ずさり、鼻を腕で塞いだ。
「なっ! なんで……!」
ユリが驚きの表情を見せる。
「なんでわかったのかって? 俺がα だからだ!」
「まさか! オークにαなんて……」
オークなんて下等な種族にαなど居ないと思っていたのだろう。
暴言を吐かないユリでも結局はオークを下に見ているのだと感じライモは苛立った。
「俺たちの種族でも一割はαだ!」
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