5 / 37
第5話
この世界にはオーク、エルフ、ヒト、ドワーフ、トロールなど様々な種族がいる。
大抵は雌雄 どちらかの性別だが、エルフやヒト等一部の種族には雌雄に加え、α 、β 、Ω から成る別の性別が存在する。
α は約一割の割合で生まれ、身体的にも頭脳的にも優秀な者が多い。
β はその種族の大半を占め、ごく普通の雌雄と変わらない。
Ω はαよりさらに個体数が少ない。
そして雄 でも妊娠することが可能で、発情期にはフェロモンを発し、Ω本人の意思とは関係なくαを性交に誘う。
ライモは後退 った。
ユリは今明らかに発情し、強いフェロモンを放っている。
すぐにユリから離れるべきだと思った。
でないとαであるライモは、Ωのユリに酷いことをしてしまう。
普段のライモなら他者をそれ程気遣う事は無かった。
だが、何故かユリだけは傷付けてはいけないと思った。
その時、遠くで仲間たちがライモを呼んでいる声が聞こえた。
(マズい! あいつらに今のこいつが見つかったら……)
ライモは急いでユリに近づくと、泉に浸かっているユリの服を背中から掴み、泉からザバッ! と持ち上げた。
「なっ、何をする⁉ 離せ!」
「一緒に来い!」
仔猫の首根っこを掴むようにユリを軽々持ち上げ、肩に担ぎライモは森の奥へと走った。
ともだちにシェアしよう!