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第5話

 この世界にはオーク、エルフ、ヒト、ドワーフ、トロールなど様々な種族がいる。  大抵は雌雄(しゆう)どちらかの性別だが、エルフやヒト等一部の種族には雌雄に加え、α(アルファ)β(ベータ)Ω(オメガ)から成る別の性別が存在する。  α(アルファ)は約一割の割合で生まれ、身体的にも頭脳的にも優秀な者が多い。  β(ベータ)はその種族の大半を占め、ごく普通の雌雄と変わらない。  Ω(オメガ)はαよりさらに個体数が少ない。  そして(オス)でも妊娠することが可能で、発情期にはフェロモンを発し、Ω本人の意思とは関係なくαを性交に誘う。  ライモは後退(あとずさ)った。  ユリは今明らかに発情し、強いフェロモンを放っている。  すぐにユリから離れるべきだと思った。  でないとαであるライモは、Ωのユリに酷いことをしてしまう。  普段のライモなら他者をそれ程気遣う事は無かった。  だが、何故かユリだけは傷付けてはいけないと思った。  その時、遠くで仲間たちがライモを呼んでいる声が聞こえた。   (マズい! あいつらに今のこいつが見つかったら……)  ライモは急いでユリに近づくと、泉に浸かっているユリの服を背中から掴み、泉からザバッ! と持ち上げた。 「なっ、何をする⁉ 離せ!」 「一緒に来い!」  仔猫の首根っこを掴むようにユリを軽々持ち上げ、肩に担ぎライモは森の奥へと走った。

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