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第34話

「ライモ。そんなに怒らないでくれ。エルフは元々妊娠率が低いし、発情期で無ければ可能性はゼロに等しい」  初日にライモが洗い、干しておいた服に袖を通しながらユリが言った。 「だが、万が一って事もあるだろう?」  ライモはユリに言い聞かせるように言った。  発情期中はユリの強いフェロモンに必死に(あらが)い、ユリの中で果てる事はなんとか避けてきた。  なのに最後の最後でユリの誘惑に勝てなかった。 「もしその万が一が私に起こったら……」  ユリはライモを見つめ、少し小首をかしげて言った。 「ライモは、私と腹の子を守ってくれるだろ?」  ユリの発言にライモは絶句する。  オークの雄は子育てをしない。  ヤリっぱなしで産ませっぱなしだ。  だがユリの発言通り、もしもユリが身籠ったら、ライモはユリと子を自分で守りたいと思った。  こんな風に思ったのは初めてだが、絶対そうすると断言できる。  ライモは自身の心境にも驚いたのが、ユリがライモの子を身籠っても良いと思っているような言い方にも驚いた。  そして嬉しさがこみ上げてくる。 「ああ、絶対守るよ」  ライモの返答にユリは満足そうに微笑んだ。  そして続けてユリはライモに抱き着き、上目遣いで言った。 「じゃあさ、次の発情期が来たら……また相手してくれる?」  ライモはさらなる嬉しさにユリを抱き締めた。 「ああ。必ず来いよ」  ユリも嬉しそうに微笑み返し「……良かった」と呟いた。  ユリはライモがそう答えると確信があったようだ。  あれだけベタベタに甘やかしてしまったのだ。  ライモの想いはユリに筒抜けになっているようだ。 「じゃ、私がいつでもこの結界内に入れるように術をかけさせてもらおう」  ユリはそう言うと自らの髪を数本引き抜き、空中に放つと呪文をサラサラと唱えた。  金の髪は光り輝きそのまま消えた。 「良し。これで何処に居てもここへ来られる」  それはライモには到底真似できない高度な魔術だった。

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