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第20話
外に出ると、空が橙色と黒が混ざり合っている。火照った肌に心地よい風だったが、圭は肩を震わせ、寒そうだ。そういえばコートを着させていないことに気付き、肩を抱き寄せてコートのなかに入れてやると圭は嬉しそうに笑った。
「しおは王子様みたい」
「そんな柄じゃない」
「だって僕のことを助けてくれた。「連れ出したお姫様」なんでしょ?」
「聞いていたのか」
山野辺と飲んだ時の会話に、聞き耳を立てていたらしい。てっきり読書に集中して、周りが見えていないと油断していた。
「全部聞いてたよ。しおがおっぱいの大きい人より、足首が細い人が好きなことも」
「ちょと待て。そんなこともか!」
「ぜーんぶ知ってる」
圭は悪戯が成功したように、にやりと笑った。くだらない話を振った山野辺には、後日礼をさせてもらわないと。
「おとぎ話の最後で王子様とお姫様が幸せに暮らしましたで終わって、僕もそうなれたらいいのにって。――連れ出されたお姫様は、王子様と幸せになれないの?」
「……口説いてるつもりなのか?」
上から見下ろすと圭は首まで赤くして首を縦に振った。
「一生、幸せにしてやるよ」
耳を甘噛みすると、圭の身体がさらに震えてあまりの可愛さに目眩を覚えた。
燻り始めた熱に気づかれないようにゆっくりと帰路についた。
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