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第6話

会社に着くと、そこには見知った忌々しい奴がいた 「櫻井(さくらい)さん、おはようございます。少し、お時間いいですか?」 本来こっちに出社することのない、店舗の人間 時々会議などはあるが、店の方が忙しいから会う機会も少なく覚えている面子は限られている だが、コイツだけは覚える気が無くとも名前までしっかり覚えていた 「司馬くん、おはよう。福岡でのオープン準備お疲れ様 まさか、忙しい店長職のキミが朝陽を追って、わざわざ無理矢理休みを取ってまで行くとは思ってもみなかったよ」 2人とも表面上は爽やかな笑顔で話しているものの、バチバチた火花が飛び散っており 「ここじゃなんだし、場所を変えようか」 周りの人間がハラハラしているのを感じ取り、話しの内容を聞かれないためにも席を外すことにした 「竹内は遊びだったんですね。アイツ、店のメンバーに必死に頼み込んで休み貰って駆け付けたのに、ボロボロになって帰って来ましたよ」 噛み付かんばかりの殺気を隠す事なく言ってくる コイツは、ずっと俺の朝陽のことが好きだと言っていた 俺の恋人だと分かってからも諦めず、何かと付き纏ってやがる 店舗が違うのに、同期のよしみか交流する機会が他の奴等よりも断然多い 仕事に関して俺以上に相談しやすいのか、朝陽の信用を勝ち得ていた 俺にとって、一番油断出来ず、朝陽の側に居させたくない相手だった 今回の出張も、店長クラスの奴が行くのはおかしいはずなのに、どうやったのか当たり前のようにメンバーに組み込まれていた 「泣いてましたよ。アンタには別で本命の恋人が居たんだって…。自分だけが恋人だと勘違いしてたって… アイツが幸せならって諦めてましたが、アンタがそんな奴だとは思ってもいませんでしたよ」 今まで以上に軽蔑した目で見てくる 記憶がなかったとは言え、アイツに嘘を教えられ、朝陽をストーカーだと思い込まされていた 朝陽を傷付ける発言や態度をしてしまっていた自覚がある あの時の朝陽の泣き出しそうな顔を思い出し、胸が締め付けられる 「俺の大切な恋人は朝陽だけだ。アレは…あのストーカー野郎のせいだが、傷付けたのは間違いなく俺だ」 ゆっくり息を吐き出し、目を伏せながらも自分の罪を告白する 「アンタ、記憶が…だったら、だったらなんで早く連絡してやらないんだよ!」 胸ぐらを掴んで怒鳴ってくるが、一切抵抗しようとは思わなかった 「アイツがどんな思いで居るのか知ってるのか?周りに心配掛けまいと必死に強がって、いつも通りを装って働いてたアイツを、なんで先に安心させてやらないんだよ!それとも、アイツは本当に遊びで、例のヤツが本命だって言うのか? だったら、さっさと竹内の側から消えろよ!アイツは俺が貰う!俺なら、アイツにあんな泣き方はさせねぇ…」 殴られるのを覚悟していたが、突き飛ばすように離れる司馬に何も言い返すことができなかった 人前で泣かないようにしている朝陽が、コイツの前で泣いたのか… それだけ、俺は傷付けてしまったのか… 「まだ…、朝陽には会えない…。今会えば、アイツが朝陽に何をするかわからない」 絞り出すように言うも、司馬は嫌悪感を隠さずに睨み付けてきて 「だったらアンタが側に居て守れよ。なんで、こんな所でウジウジしてんだよ。いつも周りに牽制しまくってるくせに」 舌打ちを打ちながら文句を言い 「竹内、今日は本社に話があるって言ってた。もう少ししたら来るはずだ」 朝陽が、もうすぐ来る

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