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第11話

事件?事故?のあと、2週間が経った。検査やら事情聴取やら、目紛しい日々だった オレを突き落とした人は、心神喪失とかでなんか入院したらしい 会ったことがあるような…、ないような… なんで会ったのかすら思い出せない人のことを、何度も何度も繰り返し確認された オレも関係しているらしいのに、全てが他人事のように感じていた 誰か違う人と間違っているんじゃないか? と、何度確認しても、オレと櫻井(さくらい)さんが関係していて、それがこの事件の理由だと言われても全く理解出来なかった… オレが、櫻井(さくらい)さんと付き合っていたって言われても、信じられない 確かに、櫻井(さくらい)さんには憧れていたし、どちらかと言えば好きな分類だけど、それは恋愛対象かって言われるとなんか違う そんな記憶一切無いのに、憶えてないのが悪だと言われているようで、何もかもが嫌になる 記憶喪失や一時的な混乱だろうと言われたが、そんな自覚一切無いのに… そんな大切な関係なら、何で忘れたんだろう… 恋人だったことだけ忘れるなんて、本当にあるんだろうか… 久しぶりに戻ってきた家は、それを裏付けるように誰かの歯ブラシや服も置いてあった 伏せられた写真立てを見ると、不思議と寂しい気持ちになる オレ、この人と本当に仲が良かったんだな… 仲良く手を繋ぎ、ピースをしている写真をまじまじと眺め、元の場所に写真立てを立てる ソファーに深く座りながら、室内に置いてある物を眺める オレ以外の誰かが寝泊まりしていた形跡が多く、ベッドには当たり前のように枕が2個、仲良く並んでいた 「恋人のことだけ忘れるって、そんな薄情な奴だったんだ…オレ……」 自嘲的な笑みが溢れる 「はぁ…、なんで憶えてないんだろ… 仕事、辞めるつもりで本社行ったこととか、こないだの出張のこととかちゃんと覚えてるのに… あ、司馬にも告白の返事しなきゃ…。司馬、好きだけど、そういうのじゃないんだよな…。ってか、なんかもう好きな人とか作りたくないんだよな…」 ソファーに置いてあったクッションを抱きしめ、溜息を漏らす 自分のことのはずなのに、わからないことだらけで気持ち悪い この部屋に居ると、何故か胸が騒つく 「あーっもーっ!!オレらしくない!!司馬に連絡して、告白の返事をする!んで、予定通り引っ越す!仕事は…、流石に相談するけど、とりあえず今できることをやろう!」 ソファーから飛び降り、スマホを鳴らしているとパタンッと小さな音を立ててまた写真立てが前に倒れていた

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