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第12話
司馬とは、すぐに連絡が付いて会うことになった
なんか、あの現場に司馬も居たらしく、ずっと心配してくれてたらしい
夜の公園でベンチに座り、先程買った缶コーヒーをチビチビ飲む
「竹内、本当にもう大丈夫なのか?櫻井 さんもあの時は大変だったな…」
「司馬、ありがとう。あの時のこと、オレちゃんとわかってないんだけど、救急車とか手配してくれたの司馬何だって?オレが入院してる時もヘルプとか色々店に回してくれたの、本当に感謝してる」
司馬の向かいに立ち、頭を上げてお礼を言う
安心したのか、ふわりと穏やかな笑みを浮かべ、頭を撫でてくる司馬に安堵する
「あと、この前はオレに告白してくれてありがとう。司馬からの気持ち、すっごく嬉しかった…
でも、ごめん。オレ…、わかんないけどもう誰かを好きになりたくないみたいなんだ。
誰とも付き合ったことないはずなのに、意味わかんないけど、もう、誰も好きになりたくない…」
顔を上げることが出来ず、司馬の顔を見ることができない
でも、気持ちを偽ることが出来ず、出来るだけ正直に思ったことを口にした
「付き合ったことないって…、櫻井 さんはどうしたんだよ」
泣きそうな困った顔をしながら顔を上げ、司馬の横に座り直す
「やっぱり…司馬もオレが櫻井 さんと付き合ってたって知ってるんだ…
オレ、憶えてないんだ…。名前も仕事も、こないだの出張のことも、ちゃんと覚えてるのに、櫻井 さんとの関係だけ、全然覚えてないんだ…」
司馬が微かに息を飲むのが聞こえるも、気にしないようにして話を続ける
「部屋にもあの人と付き合ってたってわかるのがあったけど、オレじゃない誰かの間違いじゃないかって…
他人事にしか思えなくて…
あの日も、退職しようと思って本社に行ったはずなのに、なんで退職までしようと思ったのか思い出せない
オレ…、この仕事は好きだし、誇りに思ってるのにさ…
でも、今の部屋に居るのも、あの人に会うのも、ずっと苦しいんだ…」
落ち着いて、今思っていることを告白する
司馬はそんなオレの話をただ静かに聞いてくれていた
「仕事、落ち着いたら改めて退職について進めようと思う
ここじゃない何処かに引っ越して、一からやり直そうって…
だから、司馬の気持ちは嬉しかったけど、ごめんなさい。オレを好きになってくれてありがとう」
座ったまま司馬に向き合い、頭を下げる
司馬は何も言わなかったけど、その目は少し寂しそうだった
「わかった。ちゃんと返事をくれてありがとうな。
でも、俺がお前を想っているのは変わらないから…
櫻井 さんのことを忘れるくらい、お前も苦しかったんだから、無理だけはするなよ」
缶コーヒーを一気に飲み干し、ゴミ箱に捨てるとそのまま軽く手を振って去って行ってしまった
「ごめん、ありがとう」
そんな彼の後ろ姿に小さく呟き、1人ベンチに座ってゆっくり残っていたコーヒーを飲み干した
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