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ハハハ!ついに見つけたぞ 0.99の2

「……て、手伝いだけなら……」  僕は何故か耳まで真っ赤になりながら答えたーー告白の返事をする女子高生じゃあるまいし。どっちにしてもこの状況じゃ断れないか。 「藤崎さんが運営委員として加わってくれるそうでーす」  チギラさんが嬉しそうに叫び、一同は拍手で盛り上がった。 「それではこれより、今年の第九運営事務局会議の第一回目を始めます」  生真面目な志塚さんまで機嫌良さそうな笑顔を浮かべていた。  そう。いくら長年続いているといっても、五月にいきなり結団式をやって練習が始められるわけではない。オフシーズンのうちに彼ら運営事務局の面々が地道に準備をし、渉外活動をしてこそ大ホールにプロの音楽家が呼べて、団員募集ができるのだ。 「コーヒー美味しいでしょ?」  チギラさんが僕の横に掛け、長身を屈めるよう僕の肩に肘を掛けてもたれてきたーーさあ、もう味がわからない。 「は、はい……」「実はそれね」  その時、裏口から自転車のブレーキの音が聞こえ、子どもでも誘拐して来たのかと思うくらい馬鹿でかいマイバッグを抱えた奏がキッチンに入ってきた。 「あれ、ナオ君来てたの?」 「来てたの、じゃねえよ!」  新しいバイト先が見つかったからしばらくこっちにいるとは聞いていたが。  ここかよ!  いつの間に息投合してたんだよ、この二人? 「新年からいよいよ子ども食堂兼フリースペースの準備を始めようと思ってるんだ。それで手伝ってくれる人が必要になって。あんまり高いバイト代は出せないんだけど、構わないかな」 「それは……本人がやるって言うなら僕は別に」  そんな事より、それで奏のバイト代なんか出したら赤字になるんじゃないのか?子ども向けの絵画教室でそこまで儲かるとは思えないし…… 「クラウドファンディングで資金を集めようと思ってる。お礼品に自家焙煎のコーヒー豆を出すのはどうかと思って。このブレンドなんだけど」 「ああ、いいんじゃない?美味しいよ」 「奏君が考案したブレンド」 「へえ、そうなんだ……って、ええっ?」  嘘だろ? 「いや。奏君、なかなか筋がいいよ。焙煎士の才能があるのかもしれない」 「だって奏、コーヒー嫌いだったじゃないか」 「苦いからね。いいコーヒーの匂いは好きなんだ」  奏はすましてそう言うと、バッグの中から生豆の袋をいくつも取り出した。  畝川先生がこう言った。 「いやどうして。私もコーヒーにはうるさい方ですが、彼の豆の種類だけでなく状態と鮮度を嗅ぎ分ける嗅覚には脱帽しますよ。モーツァルトのような天才的なセンスを感じます」 「いえ、自分では飲まないんだからベートーベンかもしれませんよ。地道に研鑽をつんだら本当にコーヒー界のベートーベンを名乗れるかもしれない」  いや、チギラさん。誰が上手いこと言えと。 「美味いのができたら『第九ブレンド』として売り出すべぇや。毎年赤字ギリギリの演奏会でヒヤヒヤしてるしな」  斎木さん……胸算用過ぎ。  可愛い甥をベタぼめされて悪い気はしないが……ベートーベンもモーツァルトも生前は生活力ゼロの貧乏変人じゃありませんでしたっけ?コーヒー界のベートーベンって……飯食っていけそうな気が全然しないんですけど?  これもまた神様からのギフト……なのか?  僕はまだ聞きたいことが山ほどあった。  何より、就活や大学はどうする気なのか……一応は話し合うつもりだが、結局は本人の自主性を信じて見守るしかないんだろうな。  まあでも本人が人生楽しそうなら……いいのか。 FINE

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