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第4話

「ああ、ほら……アサの体は俺を喜んで迎えてくれる」  恍惚とした様子でうっとりと目を細める褐色肌の長髪の男――エドシエルの脳が痺れるような低い声は広いとは言い難い寝室内に甘ったるく響いた。ただ、旭はベッドにうつ伏せになり枕に顔を埋めているため良い声だななどと思う余裕は無い。それよりも自らのアナルを彼の太く長い指でこじ開けられ掻きまわされる感覚に神経が高ぶり、頭がぼうっとしてくるのに体は過敏に反応してしまう。  ぐっぽ、ぐっぽ、ぐっぽ。ぐりゅ、ぐりゅっとローションによる粘度のある卑猥な音が否応なしに耳から入ってくる。一度も自分で弄った事が無いはずなのに、排泄器官であるはずのそこはすっかり緩んで彼の指を三本も飲み込み、内側の肉を滑りのある指で擦られる度じわじわと熱を帯びてゆくような気がした。  おかしい、そんな場所に指なんて入れたことは無いはずだ。エドシエルに抱かれる夢を見始めた頃から興味は出てきていたが、理性を捨てきれなかった。そのはずなのに、どうしてこの男の指を体は難なく受け入れるのだろうか。あれは全部夢だったはずだ。 「お゙っ!」  ぐりゅっ、と内部から腹側にある僅かな膨らみを無遠慮に押され、旭は思わず喉奥から押しつぶされたような酷い声を上げてしまう。先ほどからエドシエルはまるで旭の体を知り尽くしているかのように何の躊躇もなく触れ、弄り回し、攻め立てる。それはまるでここ数日の夢でさんざん旭の体に教え込んだ悦楽を現実に再現しようとでもしているようで、一度も刺激されたことのないはずの前立腺は滑った指でぐりゅぐりゅと強く撫でまわされて、旭は夢の中と同じようにピンと背中を弓なりに反らし腰をへこへこと揺らしてしまう。 「アッアッアッ、そこっ、だめっ……んっ、ふーっふーっ、お゙っお゙っ」  そんなにじっくりと弄られてしまったらおかしくなってしまいそうだった。下腹部にずっしりと溜まった熱がじりじりとその身も精神も内側から焼いていく感覚に加え、鋭く暴力的な快感が同時に襲い来て頭が真っ白になりそうだ。体が熱い、気持ちいい、全身が溶けてしまいそうで、しっかりと昂り限界まで剛直したペニスは腹に付きそうなほど反り返りながらたらたらととめどなくカウパーを垂らしている。枕も唾液でぐっしょりと濡れ、不快なはずなのに旭はそれを不快とも思えなくなっていて、与えられる快感に素直に口から零れ落ちる嬌声と共に涎が糸を引いて溢れた。 「可愛いアサ……中もすっかりトロトロで熱くなっているよ。男を受け入れたくてたまらないって、俺の指に吸い付いてくる。早く欲しいね、アサ」  相変わらず脳を痺れさせるような甘い声だ。ふーっふーっと熱い息を吐きながら、旭は強烈な快感にビクビクとその身を跳ねさせながら昨夜の夢を思い出す。美しい男の、まるで凶器のように怒張した黒光りするペニスで思い切り突かれた感覚を、夢であるはずなのに体が覚えていて腹の奥がきゅんっと切なくひくついてしまう。男のペニスなど受け入れたことのない体、しかし長く太いペニスに奥まで貫かれる快感を覚えている体。その矛盾で頭がおかしくなりそうだ。 「あぅっ、んっ、ふっふっ、こ、これはっ……ゆめっ」  男のペニスが欲しいと体が飢えている。そんなのは夢に違いない。夢でしかあり得ない。だって自分は女の子の柔らかい体や大きな胸が好きなのだ。女の子とのセックスが好きなのだ。だから……。 「ッ…………かっ、はッッ?!」  ずりゅん、と指が抜かれたと分かった次の瞬間、指とは比べ物にならないほど熱く硬く太いものがぐっちゅんとアナルに押し付けられ、そのままググッと押し込まれた。あまりの衝撃に旭は首をのけ反らせて目を見開く。メリッメリッと己の体が軋むような音がして、本能的な危機感から思わずシーツを掻いて逃げようとした。 「っ……やはり、狭いな……アサ、怯えないで? 大丈夫だから、力を抜きなさい」  大丈夫なわけがない。痛いというよりは苦しくて、息が出来なくなる。エドシエルは上手く呼吸が出来ない旭を労わるように腹部に手を差し込んで大きな掌で撫であげ、前戯で散々弄んだ結果ぷっくりと赤く腫れた乳首をきゅうっと摘まんでコリコリと押しつぶす。突然与えられるじんわりとした快感に旭はぶるりと震えた。 「ひぅっ! んっあっ、ちくびっ……ンっ、ちくびっ、だめっ」  捏ね回され舐られてひどく敏感になった乳首を再び刺激され、ビクビクと肩が震えて体のこわばりが解けてゆく。その隙を見逃さずエドシエルはゆっくりと、小刻みに腰を揺らしながらその凶器じみたペニスをずぶずぶと旭の中に埋めていった。 「お゙っ、お゙ふっ……も、入らなっ」  ペニスがめり込んでくるたびに圧縮された空気が酷い声で押し出されてくるようだった。 ──苦しい、くらくらする、夢ではすんなり入ったはずなのに。これはやっぱり夢じゃないのだろうか。 「あぅっ!」  むちゅっ、とペニスの切っ先がどこか行き止まりに到達した感覚があり。旭はそれに気づいたと同時にペニスからびゅくっと白濁を溢れさせた。男はペニスに触れなくても射精することがあるのかとふわふわとした思考の中ぼんやりと妙なことを思ったが、汗ばんだ背中に柔らかく熱いものが触れてびくりと体が跳ねる。 「可愛い可愛いアサ……ようやく、君を俺のものにできる」  背中に熱い吐息がかかり、エドシエルが旭の背中に唇を落としているのだと気づく。美しい男の美しい唇が汗ばんだ肌に落ち、ねろり、と火傷しそうなほどに熱い舌が玉に浮かぶ汗を舐めとった感覚にビクンと震えた。 「な、にっ……あっあっま、まって」  この美しい男は何なのか、まさか自らが自称したように本物の悪魔なのか。問おうとした旭だったが、ずろろろっと引き抜かれてゆくペニスの感触にぞくぞくぞくっと肌が粟立ちたまらず声を上げてしまった。 「あっあっあっ」 ──くる、きちゃう、この感覚を、知ってる!  ずりゅずりゅずりゅっと、ローションを纏ったペニスは再び旭の中へとめり込んできた。そして……。  ごちゅっ! と最奥をペニスの切っ先で思い切り抉られた瞬間、旭は目の前にパチパチと火花が散ったような錯覚を見た。一瞬で脳が真っ白に焼かれて気が遠くなるような感覚があり、だが再びずろろろっと内部を引っ掻くようにペニスが引き抜かれていってすぐにまたごちゅっ! と最奥に熱い楔を打ち込まれる。 「お゙っお゙っお゙ふっ、やらっ、それっ、あ゙んんっ!」  こんなのは知らない。夢の中ではただただ気持ちよくて、まるでぬるま湯に浸けられたような離れがたい中毒性のある快感というだけだった男のペニスは、現実で直腸にごちゅごちゅと叩きつけられると圧倒的な質量と熱に頭が沸騰しそうだった。無理だ、耐えられない、こんなセックスを知らない。  膝が笑ってしまい力が抜けて崩れそうになると、エドシエルは長い腕で旭の腰を抱き寄せる。最奥に切っ先を押し付けられたまま男は小刻みに腰を揺らし、そのたびにぱちゅんぱちゅんと肉がぶつかり合う音とぐぽぐぽとアナルから泡立ったローションが溢れる音が混ざり合って酷い不協和音となる。だが、旭はもう寝室に響く音など聞いている余裕は無かった。 「あっあっあっだ、だめっ、だめっこれっ……おぅっ、ひゅっ」  頭の芯まで熱で焼かれてゆく。とめどなく涙が溢れ、何も考えられない。気持ちいいなんておかしい、おかしいのに耐えがたいほど気持ちいい。腰が揺れるのを止められず、再びだらだらと射精しているのも気づかないほど体が熱くて熱くてたまらなかった。 「っ……ああ、アサ、気持ちいいね?」  恍惚とした響きの甘い声が脳の奥を痺れさせる。旭はまるで水面で溺れたようにはふはふと酸素を求めて口を開くが、息を吸う合間に意図せずあられもない嬌声が押し出されるのを止められない。  夢で抱かれた時よりもずっと苦しくて、熱くて、気が狂いそうなほどに男のペニスは気持ちいい。もう何もかも、どうでも良くなってしまう。 「あふっ、あ゙ぅっ、ふーっふーっふーっ、きもちぃ……っ。え、えど、きもちぃっ」  自分の中で男の怒張したペニスがどくどくと脈打っていて、上向いたまま収まらないペニスのせいでぷっくりと存在感を増した前立腺をごりごりと擦り上げながらどろどろにぬかるんだ熱い肉を掻き分けてゆく。 「ふぅ……ふっ……ああ、俺もっ、気持ちいいよ」  完全に胸をシーツに付けてしまった旭は抱えられた腰だけを男の前に晒してシーツの海で藻掻く。白いシーツには大量のカウパーと精液が水たまりのようになっていて、エドシエルが力強く腰を打ち付けるたびにぶるんと旭のペニスが跳ねて水しぶきを落とす。ごちゅごちゅごちゅっと勢いを増した最奥へのピストンに頭の芯が完全に焼き切れたように視界を朦朧とさせながら、旭は涙や涎や汗でひどく汚れた顔で肩越しに自分を抱く男を振り返る。  浅黒い肌を汗で濡らし、長い黒髪を掻き上げながら美しい男はその美しい筋肉で覆われた体を滑らかに動かしながら男を夢中で犯している。 「ふぅ、ふっ……っ、アサ……全部、注ぎ込むからっ……俺の子種で、孕むんだよっ」  熱に浮かされたように男はそう言って、壮絶なほどに美しい笑みを旭に見せる。金色の瞳がぎらぎらと燃えて光り、覆いかぶさる男の逞しい背中からゆらりと艶のある真っ黒な、蝙蝠のそれに似た羽が広がるのを見た。 「あ゙っあ゙っ」  この男に抱き殺されるのかもしれない。恐ろしいはずなのにごりごりと弱いところを突かれて、旭は何も考えられずただ声を上げることしか出来ない。苦しい、苦しいくらいに気持ちいい。もう、どうなってもいい。 「ッ!!」  男のペニスが旭の最奥をごちゅん! と突いた。ぞくぞくぞくっと悪寒にも似た感覚が腰の奥から這い上がってきたのと同時に、男のペニスがビクビクと震えて旭の中にびゅうっと熱いものが注ぎ込まれる。勢いよく放たれるその熱さと迸る感触に再び目の前がチカチカと明滅し、旭の思考はそのまま暗い闇に落ちていった。

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