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第1章 0.01ミリメートルの防御壁1※
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0.01ミリメートルのコンドーム。
これが、ぼくの身体を唯一守ってくれる防御壁だ。
性交渉を不特定多数とすればHIV、梅毒、クラミジア、ガンジダといった性病に罹 る確率がグンと上がる。
梅毒なんてキスしただけで伝染 るらしい。昔は抗生物質が効いていたのに最近は効かないとか、罹る人が急増している……なんて書かれたネットニュースを目にした。
命を脅かす可能性のある病魔から身を守る。罹る可能性を激減させてくれるアイテム。
でも使い方を間違えれば意味のないもの。
心にも傷つかないようにするための膜を張れたらいいのに、なんてくだらないことを考えていれば、男のペニスがぼくの解された後孔に潜り込む。
まるで生でヤッているのと大差ない。
ペニスが脈打つ感触も、くっきりと浮かんでいる血管の一本一本、熱い体温をダイレクトに感じて、ため息をつく。
背後にいる男も「すごっ……生と変わんないじゃん」なんて、つぶやいている。
一番異物感のある太い傘さえやり越せば、竿 の部分を飲み込める。
「あっ、ん……んぅー……」
中を、太く脈打つもので満たされると自分が“生きている”と感じられる。
「気持ちいい?」と男が覆いかぶさってきて耳元で囁 きかけてくる。
「いい、……すごい。きもちぃ……」
「オレもだよ。じゃあ、もっと気持ちよくなろうか?」
そうして男の顔と身体が遠ざかる。
臀 部 を手の平でスリスリと撫でられ、男の男根がヌプリと出ていく。かと思ったら、中に勢いよく挿入 れられる。肌と肌がぶつかる音がする。安物のラブホのベッドがギッ、ギッと軋んだ。
最初から激しい律動だった。
男のかいた汗がパタパタと背中に落ちる。中を突かれれば慣らすために入れたローションが溢 れ、腿 へ伝い落ちる。
男の獣じみた吐息に興奮する。
「あ、あ……そこ、いい。……いい……もっとぉ……」
「ここだね。このふっくらして、コリコリしているところ……いい?」
「そう……そこ、そこ! きもちぃ……さいこ……あ、」
感じたままに喘 ぐ。
ペニスがペチンペチンと自身の腹を打つ。涙のような我慢汁が散ってシーツを汚す。
左手をついて腰を高く上げた姿勢となり、右手で自身を扱 く。
男の手が前に回って両の乳首に触れる。散々舐 られた乳頭を指で摘 まれ、転がされ、いじめられる。
「イク……イッちゃうよ……」
「いいよ、イッて……」
ガツンと前立腺をペニスの先で叩 かれる。とてつもない衝撃に「ああっ!」と大声で叫んでしまう。
全身が強張って眼前で火花が飛ぶ。勃起していたペニスからビュッと勢いよく白濁液が吐き出された。
ぼくのペニスは断続的に射精しているのに、男は止まらない。「いやあ、止まって……おねがい、止まってぇ!」と泣き叫んでも容赦なく腰を強く打ちつける。むしろ意地の悪い笑みを浮かべてノリノリだ。
「ひぃ……こわれ……こわれちゃ……うぅ……あん!」
「いいよ、もっと感じて! 壊れちゃいなよ」
「ああん……あん、あ……ああ……や、あぁ……やめてぇ……やあ、ん……」
男に身体を抱き上げられ、限界まで足を開脚させられる。
そのまま男のペニスで身体を突き刺されたも同然の状態となり、バチュバチュとペニスを出し入れされる。重力によって自分の体重がかかり、男のペニスを根本まで飲み込む。前立腺だけでなく奥の結腸まで刺激される。
前立腺を幹で擦られ、奥をペニスの鬼頭で攻められる。暴力的な快楽に声も出ない。
ふたたび首を擡 げたペニスを押さえている手をはねのけられる。
男の手で激しく上下に擦られて目がチカチカする。
そのうち尿意を覚えて全身がブルブル震える。尿道口と後孔がクパクパと口を開閉する。
「だめ……だめ、きちゃ……くる、くるぅ……!」
「いいよ、出して……いっぱいイクんだ!」
そう男に言われて僕は背をのけ反らせ、天上を仰ぎ見る。ペニスがプシュッと音を立て、盛大に無色透明の液体を吹いた。
男が短く喘ぎ、ぼくの身体の最奥に精液を吐き出す。
ぼくはベッドの上に倒れ込んだ。男のやわらかくなったペニスがズルリと抜ける。
全身にビリビリと電気が走っているみたいで、指一本動かせなくなる。
横目で、男がもったりとしている精液の入ったコンドームを外し、口を縛っている姿を眺め見る。箱ティッシュから取ったティッシュでくるみ、ゴミ箱へ投げ捨てた。
学校でコンドームのつけ方や男女のセックスのやり方を機械的に教わる。性病がどれほど恐ろしいものか、思春期に始まる射精・生理のこと、どうして赤ちゃんができるのか、そしてバース性のこと。
けど……どうしたら幸せな恋愛ができるのか、普通の結婚をできるのかを学校も、教師も教えてくれない。
そんなことは親や友だち、恋人に聞くべきことと一蹴される。
でも、友だちに聞いてもAV女優が男優に犯されるか、悪戯される内容のセックスが話題の中心だ。そもそもゲイでバリネコであるぼくにゲイ向けのAVを話す友だちは、中・高にいなかった。
親はというとぼくを養育し、“優秀なエリート”に育てること以外は、もっか興味がない。
あの人たちにとって大切なのは愛より金。金より名誉だ。
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