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周老板(ジォウ ラァオバン)に温情をかけていただいて……手前は手前のやってきたことを後悔するようになりました。食う為とはいえ、何の躊躇(ためら)いもなく人を殺して生きてきたことを――心の底から悔いた……。だから手前は……」  要するに(イェン)からかけてもらえた温情によって、これまで歩んできた自身の人生を後悔するに至ったということだ。 「散々っぱら人を手にかけて……今更悔いたところで赦されることじゃねえのは承知です。本当に……なんてバカな生き方をしてきたのかと……悔やんでも悔やみきれやせん……!」  堪え切れずに涙するロナルドに、(イェン)もまた切なげに小さな溜め息が漏れるのをとめられなかった。 「ロナルド――。あの後、お前さんのやってきた仕事については俺の方でも洗わせてもらったのだがな。お前さんが手にかけた相手は――世間でもいわば悪人と括られる者たちだったようだな」 「(ジォウ)……老板(ラァオバン)……」 「身勝手極まりない理由で何の罪も無え家庭に押し入った強盗殺人犯、一時の欲だけで好き勝手に女子供を踏みにじった強姦魔、私腹を肥やす為に阿漕なことに手を染め続けては他人の築き上げた財産や地位を横取りしてきた(やから)。上げればキリがねえが、お前さんが始末した人間はその殆どが理不尽と思える凶悪な犯罪に手を染めてきた(やから)だった。確かに殺されたとて当然――とは言わんが、少なくともお前さんが私利私欲だけで仕事を請け負ってきたわけじゃねえというのは分かっているつもりだ」  ロナルドに関しては『金さえ積めばどんな仕事でも請け負う欲深い殺し屋』だという噂があったようだが、おそらくは狩る相手が理性のかけらも持たない軽率な考えしか持たない悪人であることから、その後の恨みを買うリスクのある仕事を大概の殺し屋ならば引き受けないという理由だったのかも知れない。  先の(ひょう)の件にしても、両親を殺された恨みという理由なら――と思い、引き受けたのだろうことが想像できる。つまり、これまで彼に殺された側の人間は他人の尊厳や命を軽々しく考えている無法者であるが、殺す側のロナルドにとっては意味もなく悪戯や好奇心で他人を手にかけてきたわけではないといえる。そんなふうに言いたげな(イェン)の言葉に、ロナルドは驚いたように瞳を見開いては彼を見上げた。  もちろん、(イェン)がこれまで自身が手にかけてきた仕事について既に調べ上げていたということに驚いたというのもあるが、決して面白半分で殺し屋という稼業で生きてきたわけではないのだろうと言ってくれているように思えたからだ。

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