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154 終焉
「そこまでだ羅鵬 !」
冴え冴えとした声音で悪の枢軸にとどめを告げたのは焔 の父、周隼 であった。そして鐘崎 組組長・僚一 の厳しい声が続く。
「お前さんの仲間は既に我々の手中だ。抵抗しても無駄だ」
僚一 曰く、この騒ぎの間に皇帝邸にいた者たちを始めとした羅鵬 一派すべてを捕らえて拘束したというのだ。
まさに終焉であった。
「クソ……、クソぅ……! てめえら……いつの間に。この俺のバックにはデスアライブという組織がついていることを忘れたかッ! てめえら、勝った気でいるようだが……このままで済むと思っちゃいまいな!」
こうなって尚、羅鵬 はとことん諦めが悪い。自分には組織という巨大な後ろ盾があるのだと息巻いては威圧をゆるめない。
「後悔することになっても知らんぞ! 例えこの場で俺を葬ったところで、組織が必ずやてめえらに報復する……! その時になって吠え面かいたところでもう遅い!」
まるで狂気のように叫び、気が狂れた笑い声を轟かせ続ける。そんな羅鵬 に周隼 は言った。
「誰も貴様を始末するとは言っていない」
「……なにッ……!? どういう……意味だ」
「始末はしない。我々は――な」
我々は始末しない――とはどういうことだと一瞬固まってしまった羅鵬 の視界に、世にも恐ろしい光景が飛び込んできて時が止まった。
ゆっくりと周隼 らの背後から姿を現したその人物を目にするなり、羅鵬 は恐怖におののく形相で蒼白となった。なんとそれはデスアライブという組織の一員で、上層部に君臨する人物だったからだ。羅鵬 にとっては決して頭の上がらない上役といえる。
「な……ぜ、あなたがここに……」
縮み上がって声は涸れ、上手くは言葉にすらできないでいる彼の前に、その男はゆっくりと歩を進めた。
「――なるほど。周隼 殿のおっしゃる通りだ。羅鵬 、お前のような輩にこの九龍城砦を治める資格など到底あろうはずもないな」
「……な、な、なんと……。こ、この九龍城砦は……ご報告申し上げている通り、既に私が牛耳ったも同然です! それをいつまでもこの周焔 が……デカいツラして……のさばって……」
「お前が皇帝周焔 殿に代わってこの九龍城砦を手に入れたという報告は受けていたがな。そのやり口はとてもじゃねえが褒められん話だ」
焔 の父・周隼 はこの一年の間にデスアライブという組織の実態を探り、残忍と言われる噂の高い組織の中でも話の道理を理解してくれそうな幹部の男を見つけ出し、伝手 をつけることに尽力していたのだ。それがこの男だったというわけだ。名を松健正 といった。歳の頃は周隼 や鐘崎僚一 らと同じくらいといったところか。
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