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13 キャロットプリン
(ふわっ。カッコいい。深森は男が見てもやばいぐらいにいけてる。肉食獣人は筋肉の付き方がなんかセクシーなんだよな。体形も顔もかっけぇ。どうしよ……。『一生のお願いその二』をただの友達のオレが言っても言いわけ? いや待て、ひるむな。深森はさ、男友達の家にくるのにドキドキも何もないだろうから、いきなり変なテンションに持ち込んで気持ち悪がられて帰られたら困るだろ。こんな女子がほっとかないイケメンがいくら友達思いだからって、暑い中チャリ漕いできてくれるなんてやばすぎる。いいやつすぎる。いいやつすぎて、オレの意味わかんない願いも聞いてくれる、かも?)
卯乃だって男女ともに「可愛い、愛くるしい、親しみやすい、ついでに発情しやすくてエッチな事が好きそう」といい方にも悪い方にも目立って人気の兎獣人の端くれなので、それなりにモテてきた。だから学内でも人気のイケメンサッカー選手と二人きりになったからとはいえ、ひるんでいる場合ではないと自分に言い聞かせる。
「暑い中来てくれて、ごめん」
「そこはありがとう、だろ?」
すかさず指摘し、深森は猫獣人にしてはなだらかな釣り目を柔らかく細める。
「うん。ありがと」
素直に礼を言うと、深森は長いふわふわとした毛が飛び出す耳をぴくぴくっとさせて満足げに頷いた。その間も卯乃が猫にしては柔らかな三角の耳にくぎ付けになっていると、わざと注意をそらすかのように、深森はぐいっとレジ袋を差し出してきた。
「店がもう開いてなくて、コンビニのやつな」
「わあ、にんじん印のキャロットプリンだあ」
差し出されたレジ袋の中身はいつも卯乃が気に入って食べている銘柄のプリンだった。それを大事そうに受け取ると、卯乃は日頃は誰に対してもクールな彼の思わぬ心遣いに不意をつかれて涙がほろほろと溢れそうになってしまった。
「手ぶらでよかったのに……」
「甘いものでも食べたら、少しは落ち着くだろ」
卯乃は目を潤ませながらはにかんで上目遣いに深森をみやった。
「うん……。でも深森の顔みたら、なんか、もう元気出たよ。ありがとう」
「……そうか。ならよかった」
「理由聞かないの? しょうもない理由なんだぞ。家族も猫もいない一人っきりの夏休みなんて初めてで、迎え火焚いてたら寂しくなって、忙しい深森のこと呼んじゃったんだぞ」
「まあお前がこんな夜中に俺以外を呼ぶより、ずっとましだな。むしろよくやった」
「そんなもんか?」
「ああ。これからずっと、呼ぶなら俺だけにしとけよ、ウサちゃん」
「ウサちゃん言うなよ」
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