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15 愛猫
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それぞれ湯を浴び汗を洗い流して、深森はTシャツに下はジャージの長ズボン、卯乃も上はタンクトップに下は太もも丸出しの短パンという似たようにラフな恰好だ。二人して仏壇の前に正座をして畏まる。
一階の和室に置かれた仏壇の前からは線香の煙がゆらりと立ち上っている。卯乃はチーンとおりんを鳴らして手を合わせた。
兎耳の生えた先祖の遺影の隣には真新しい写真立てが置かれていた。
凛々しい顔立ちに知性まで透かしみえそうなマスカットグリーンの瞳。ライオンの鬣のように豊かな赤銅色の毛ぶき、そんな一匹の猫の写真が飾られている。それは春に虹の橋を渡った卯乃最愛の飼い猫、サイベリアン「ニャニャモ」の遺影だった。
「ね、深森と似てるだろ?」
「……」
今日から盆の入りだったが、卯乃以外、他の家族は皆転勤先から父方の実家に帰省している。だからアルバイトの為こちらに残った卯乃が責任をもって迎え火を焚くことになっていた。
夕方、ほうろくにおがらを載せて煙を立てたら、それが目に滲みた訳でもないだろうにぽろぽろと涙が零れてきた。
ニャニャモが亡くなった頃は受験のこともあって色々と忙しく、努めて深く悲しみに浸らないように心に蓋を閉めていた。しかしそのせいで今をもっても心にポッカリと穴が空いたまま春を迎えて夏が来た。
迎え火を焚いたらきっとニャニャモは卯乃の傍にきてくれるはず。するとどうにも寂しくて、どうしてもニャニャモにまた会いたくてたまらなくなってしまった。そんな時に頭に浮かんだのは、深森の顔だった。
散々悩んでそれでもダメもとで「会いたい」と呼び寄せたのは、彼の中にニャニャモの面影を見ていたのも大きい。
「ニャニャモは、オレが小学生の時からずっと一緒にいて、だいぶ長生きしてくれたけど、大学の合格発表を待って息を引き取って……。だからグランドでゴール守って跳躍してる深森の姿を見た時、ニャニャモが生まれ変わって元気に駆け回ってるような気がして、すごく嬉しくて……」
「……俺と似てる、か?」
「似てるよ!」
ますます複雑そうな顔をした深森に食い気味にそういい放ち彼の膝に縋るように手を置くと、卯乃は熱っぽく語り始めた。
「入学直後に深森を一目見た時からニャニャモにすんごく似てるって思ってたんだ!」
「そうか?」
飼い猫に似ていると断言され、深森は眉間に僅かにしわを寄せられたが、卯乃はもうここまで来たら洗いざらい喋ってしまえとやけっぱちになって続けた。
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