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26 一生のお願い
小さな灯りとはいえ、しっかりと卯乃の綺麗な素肌が目の前に晒され、深森は今日一日の疲労と興奮と我慢の全てのピークが一気に押し寄せてきて、ついにぷつり、と何かが切れた。
「卯乃!」
ゆらゆら揺れていた電気の紐をかちっと深森が引っ張り、急に部屋が明るくなった。
卯乃が眩しいと目を瞑った瞬間、深森は夏掛けを畳の方まで弾き飛ばす。すごい勢いで起き上がると、まだウサギになっていない卯乃を電光石火の勢いで布団の上に組み敷いた。
「へっ?」
目を白黒させて自分を見下ろす深森の顔を見上げれば、牙が食い込まんばかりに唇をかみしめ、耐えるような顔をしている。
「お前、どこまで俺のこと試すんだ?」
その苦し気な表情があまりにもセクシーで、再び巡ってきた妖しい雰囲気に卯乃は流石に彼の気持ちを推し量った。
「俺。お前の事好きだって言ったよな? もう、逃げないで。お前の気持ちも聞かせてくれ」
深森は卯乃の揺れ動く気持ちを正しく理解していて、さっき再び猫になることで卯乃を逃がしてくれようとしたのだろう。
檻から逃がしてもらったくせに、愚かな兎は再び自ら猛獣の待つ檻に飛び込んだのだ。
空調の音がいやに大きく聞こえるほど、お互い黙りこくっているが卯乃の耳には自分の心音がどくどくどくと聞こえてくるようだ。
(深森にだったらばりばりって食われてもいいかも。こいつの血肉になるならいいなって思えるような、オレにとってそんな相手だって本能が分かるんだ)
卯乃は深森の心臓のあたりに柔らかな手を置く。その胸の鼓動が自分のせいで高鳴るところをまた感じたかったのだ。
「深森、一生のお願い聞いてあげる」
ぐっと一度眉根を寄せ、深森は熱い息を漏らした。
「今、ウサギの姿になるな」
「一つ目、分かったよ。次は?」
卯乃は深森のきりっとした輪郭を掌で柔らかくなぞり、彼の頤から喉を、指を滑らかに動かし誘うように撫ぜる。
「二つ目。俺の恋人になって」
「……うん。いいよ。深森なら」
卯乃は逞しい深森の首に腕を投げ出し回して、誘うように唇を小さく突き出した。
「卯乃っ」
「んっ」
切なげに名前を呼ばれ、目を瞑ったら卯乃の小さな口、全てを覆うように柔らかな感触が落ちてきた。ちろっと舌を出し、深森の尖った牙のちくちくを舐める。舌に穴が開きそうなほど押しあてると、逆に舌を探り絡められ、そのあと長い舌が卯乃の歯列をなぞってきた。こそばゆさと快感が織り交ざる中、卯乃は「はあっ」艶めかしい溜息を洩らして唇を離す。そして傍から見たら卯乃の姿がすっぽりと隠れるほどの広い背に腕を回し、ぐいっと引き寄せた。
「三つ目は?」
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