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27 欲しい

 二人の唇の間に伝う雫を、卯乃は色っぽく嘗め回す。日頃のまだあどけなさの残る表情とは違い、頬を染めた白い顔は妖艶な美しさを覗かせる。  深森は眦がやや切れあがった大きな瞳を見開いたあと、宝石のようにキラリと光ったと錯覚するほど熱情が籠った眼差しを向ける。 「卯乃が欲しい。全部」  真っすぐに射貫いてくる眼差しから卯乃は睫毛を伏せ逃れ、「いいよ」と消え入りそうな声で呟く。すぐさま、深森は卯乃の頭の後ろに手を入れ引き寄せ、唇をくっつけながら囁いてきた。 「番いたいほど、お前が好きだ」  日頃から浮ついたところのない男の真摯な告白は、大げさではなく本当にそう思っていると感じる説得力を秘めていた。  同種の雌雄でないと種を残すという観点では番うことはできないが、別種の雌雄、同種の同性、別種の同性。深い愛情で繋がった者同士は全て、番として共に生き支え合って人生を歩むことができる。卯乃の育ての親のように、多産な種の獣人では同性の番も、兄弟姉妹の子を養子にして共に育てるのはよくあることだ。卯乃には深森と共に歩み暮らす、温かく楽しそうな未来を容易く想像ができてしまった。 (ニャニャモ似のとこも、いつだって甘えんぼなオレに優しいところも、勇ましく危険から守ってくれるところも、選手としてストイックで尊敬できるところも、全部ひっくるめてオレ、こいつの事、大好きだな) 「お前は? 俺の事どう思ってる?」  もう一度強い眼差しに促されて卯乃はついに覚悟を決めた。 (こんなに真っ向勝負で告白されたら、もうはぐらかせない。友達じゃなくて恋人でも、深森が傍にいてくれるなら……) 「オレもお前の事、好きだよ。好きじゃなきゃ、こんな夜中に呼び出したりしないでしょ?」  それは恋に臆病な卯乃の、ついに告げたまごうことなき本心だった。 「そうか」  ゆっくりと噛み締めるように頷いてから、深森はふわっと笑顔になった。その顔があまりにも男前ですごく嬉しそうで、途端に愛おしさが溢れてきて、卯乃の方まで浮足立つ。 「んーっ。オレも好き。好き好き、深森のこと、だーいすき」  一度口から飛び出したらもう止めることができなくなった。止めどなくあふれる温かく甘くムズムズする想い。好き、好きと繰り返す卯乃の唇に、深森は応える代わりに口づけを繰り返す。 「抱きたい、許せ」 「……ゆるす」  卯乃の膝裏に手を入れて、ぐいっと腰が浮くほど持ち上げられた。

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