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番外編 内緒のバイトとやきもちと2 side卯乃

「お待たせしました。キャロットゼリーパフェとウサちゃんふわふわオムライスです。ケチャップかけてよろしいですか? ぴょんぴょん♡」  卯乃は内心(あー、恥ずかしい!)と赤面しながら一生懸命兎の形に盛られたオムライスに目と鼻をかいている。  猫獣人の親子が嬉しそうに手を叩いてくれたのか嬉しかったが、何度やってもこのフレーズ、恥ずかしくて慣れることはないだろう。 「ごゆっくりお過ごしください」  卯乃がふわふわの尻尾がぴょこっと覗くショートパンツ姿でカウンター裏に戻ってくると、垂れ耳を持つ兎獣人の店長が良くできました、とばかりにウィンクをしてくれた。  卯乃のバイト先は可愛いウサちゃんに癒されたいお客さんがいわゆるうさぎカフェだ。実際に触って癒されることもできるが、ガラスを隔てて卯乃がいる側のカフェはウサちゃんの様子を眺めながら食事を摂ることができる。  そもそも兎好きが集まるとあって、従業員もみな可愛らしい兎獣人、カフェのメニューも物販部門のぬいぐるみや雑貨もみな兎尽くしの人気カフェだ。 「まあ、及第点だな。卯乃。もっとニコニコしたっていいぐらいだぞ」 「……ぴょんぴょんって。恥ずかしいんだけど」 「兎獣人がぴょんぴょんいって何が悪い。うちはこれでもか、というぐらいの圧倒的なウサちゃんの愛らしさを堪能できることがウリなんだから」  チョコレートブラウンのズボンに同色のウェストコートでびしっと決めた店長が卯乃の蝶ネクタイが曲がっていたのを直してくれた。 「それはあっちの本物のウサちゃんが頑張ればいいだけだろ。俺も店長みたいなカッコいい格好したいのに。それか店長も俺と同じ格好してよ。俺だけこれ、恥ずかしい」  卯乃以外にホールで働いている人はみな若い女性ばかりだ。お店オリジナルのキャロットオレンジ色のメイド服に爽やかな淡い若草色のギンガムエプロンを身に着けている。制服が人気でバイトの応募はひっきりなしだ。  卯乃だけがオレンジのベストに同色のショートパンツとミニのギンガムチェックの腰エプロン、同じ柄の蝶ネクタイ、若草色のシャツに白い靴下を履いた制服を身に着けている。滑らかな白い脚を女子制服と同じぐらいに出しているのが本当に恥ずかしい。 「そんなことない。卯乃に似あう様に僕が特別に誂えたんだから間違いない」    店長は卯乃とよく似たロップイヤーの耳を後ろにふる。 「それにオレがいくら美形でも三十路近いんだからその格好は流石に無理」 とふふんっと笑う。  本人はそういうが、兎獣人はかなり若く見られやすい。今だって美男の店長が卯乃と並んでいるさまは年の近い兄弟のように見えているだろう。   「ほら、お客様が見えたよ」 「いらっしゃいま……」  ぬーっと大きな人影に一瞬店内がざわついた。パステル調のファンシーな色彩に溢れた店内に、明らかに部活帰りのようなスポーティーな服装をした熊獣人が入ってきた。  しかしその後ろから現れた人みて、卯乃は思わず後ろの飛びのくほど驚いてしまった。そこには夜自宅に訪ねてきてくれるはずの恋人が立っていたのだから。  

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