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★  ザクりと、皮膚を貫通する音がする。痛みはその一瞬だけで、代わりにジンジンと熱を帯びはじめた患部に通ったニードルとピアスに両側から力を加えながら接続する。鏡でピアスの位置を確認しながらキャッチを右に回し力を込めると、熱を帯びて赤くなった右の鼻翼に、シルバーが鈍く反射する。  さっきまで裂けそうなほど痛くて苦しかった部分がが、ピアスを開けた痛みと患部の熱さで少し高鳴った心臓にすり替わったように感じてすっきりした。 「もう開けれるとこも少なくなってきたなー…」  洗面器に手を乗せて前のめりになりながら鏡に顔を近づける。顔に空いている穴は左唇、左眉、そして今開けた右鼻翼の三つ。両耳に好みの場所がなくなってからまだ三ヶ月ほどしか経っていないのに、先月は眉に、今日は鼻に新たなピアスが増えた。顔はなるべく開けたくないんだけどなあ…。自分の衝動的な行動に後悔する。 「…っと、痛ったあ」  前のめりになりすぎて、臍のピアスがあたり鈍痛が走る。開けて四ヶ月のそこはまだホールが安定しておらず、つい忘れて当たったり引っかけたりすると痛みを感じる。臍を軽くさすりながら、ふと頭に浮かんできた午前中の出来事を思い出して、それを消しさるように頭を振る。ブリーチばかり繰り返した抜きっぱなしの金髪が電気の白い光を跳ね返して星が弾けたように煌めく。  洗面所を出て左のリビングに入ると、ベッド横の小さなテレビでちょうど、毎週家を出る時間にオープニングが流れる料理番組が、今日の献立を発表していた。左上に表示された時間は12時10分。 「やっば…!」  慌ててテレビと電気を消してベッド横に置いてあったリュックを背負いながら机に置いてある鍵を握る。玄関で靴を履きながら両親の映った写真に行ってきます、と声をかけて家を飛び出した。

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