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「おはよう、嶺二」
「んー、おはよ」
サングラスをかけただけの杜撰な変装をした嶺二は、車に乗り込むとサングラスを外して襟元にかけ、長い足と腕を組んで目を瞑り眠そうに答えた。夏の始まりを感じさせる濃くなった日差しが差し込み、綺麗な顔にかかった色素の薄い嶺二の髪にきらきらと反射して、ああ、綺麗だなと思う。
「眠そうだね…よく眠れなかった?」
車をゆっくりと発進させる。ショートスリーパーで寝起きの悪くない嶺二が眠そうにしているのは珍しい。バックミラーに映る嶺二をちらりとみて問うと、んー、と曖昧な相槌で躱される。待てよ…?
「嶺二もしかして…」
いつもよりも濃いシャンプーの香りを感じた気がしてすん、と鼻を啜る。ジロリとバックミラー越しに嶺二を睨むと、目が合ってげっ、という顔をした後狼狽する。
「いやあ、今回だけだから!」
「嶺二の今回は何回あるんだよ!」
「ゴメンって!」
やはり女と会っていたのか。最近はライブにテレビにラジオに映画の撮影に、と多忙だったため落ち着いているなと安心していたらすぐにこれだ。
「はあ…相手は?」
「…わかんない。その辺で引っ掛けたから」
ふっ、と視線を逸らされて嘘だと分かった。
「…そう、流石に分かってると思うけど綺麗に終わらせられたよね?どうせやるなら一般人はやめてくれ」
「ん…ごめん」
嶺二は嘘をつく時人の目を見ることができない。知らない|相手《一般人》とヤるほど理性がないわけでもない。人の口に戸は立てられないと身をもって知っている嶺二が相手を言わないということは…本気なのか?
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