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第2話

 目的の十三号館に来ると人の数もまばらになる。主に写真科の講義を行うので、他学科の生徒はあまり足を踏み入れないせいだ。  エントランスに入ると壁一面に写真が展示されて、大きさも様々だ。被写体も人だったり動物だったり植物だったりと、撮影者の個性が強く出ている。  この展示は「月刊写真展」通称「写展」と呼ばれ、月に一回写真科の生徒が自由に作品を展示し、お互いの技術を磨く戦場だ。  「五月に入ったから写真が変わってるね」  智美は展示された写真を眺めながら奥へと進んでいく。後ろについていきながら伊織も写真を眺めた。  四角の中に綺麗に収めようとしている写真に反吐が出る。カメラの性能に任せ、色彩は鮮やかだがそれまでだ。写真からカメラマンのメッセージが伝わってこない。  ただ綺麗なものを綺麗に映そうとすましている。  展示品から視線を逸らし、階段へと向かう。  智美の張りのある声が背中に当たった。  「夕飯は家で食べなってお母さんが言ってるから、帰りは一緒に帰ろうね」  「はいはい」  「学食で待ち合わせだよ! 迷わないでね」  「へーい」  ここから学食までの道順を頭に描きながら、講義のある教室に向かった。

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